著者
高倉 耕一
出版者
日本生態学会
雑誌
日本生態学会大会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.52, pp.697, 2005

外来生物などにおいて、ある種では新規生息地への進入直後に爆発的に分布域を拡大し、他の種では分布域の拡大が比較的緩やかであるという現象はしばしば観察されている。しかし、その違いがどのような要因に差によるものなのか必ずしも明らかでなかった。本研究では近年日本に侵入し広範囲に分布するにいたったハブタエモノアラガイ <i>Lymnaea columella</i> と数種の近縁種を材料として、大阪とその近郊における分布の現状を明らかにし、その分布域拡大の要因について調べた。その結果、大阪および京都南部の平野では大部分の潜在的生息地に外来種ハブタエが生息していた。室内実験から、ハブタエは在来種のモノアラガイ <i>L. auricularia japonica</i>とともに飼育した場合に死亡率が高く、産卵数も少なかった。また、2種間には配偶攪乱は検出されなかった。一方で、ハブタエは同種個体間でも求愛および行動が観察されず、自己交配による近交弱勢もほとんどなかった。これらの結果をふまえ、大きな空間スケールでのメタ個体群の挙動を予測するシミュレーションモデルを構築し解析を行った結果、分断化された小パッチからなる生息域においては、ハブタエのように近交弱勢が存在しない場合には速やかに分布域を拡大したが、他種のように近交弱勢が存在する場合にはその速度はゆるやかであった。以上から、大阪・京都南部におけるハブタエの蔓延は、生息地の分断化と近交弱勢の低下が主要な要因となってもたらされた現象であると推測された。

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