- 著者
-
松田 浩
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.5, pp.2-12, 2012
<p>万葉集には、五十数例の「いはふ」という語が見られる。本特集の呼びかけ文にあるように、現今、万葉集のテキストも電子化され、検索機能を用いれば瞬時にその用例を並べることもできる。そのことによって、「いはふ」には「いむ」や「まつる」といった言葉との親和性があることが浮かび上がる。だが、それのみでは一つの歌になぜ「いむ」でも「まつる」でもなく「いはふ」が用いられているのか、という問題まではなかなか論じることはできない。本稿では折口信夫の鎮魂論における「いはひ」という概念に注目することによって、万葉集に見られる「いはふ」という語の表現性について考えてみたい。</p>