著者
林 伸和 川端 康浩
出版者
日本臨床皮膚科医会
雑誌
日本臨床皮膚科医会雑誌 (ISSN:13497758)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.63-67, 2018

イボにヨクイニンを奨める広告を見て,脂漏性角化症(老人性疣贅)にヨクイニンの処方を希望して皮膚科を受診する患者が少なくない.そこで,ヨクイニンの脂漏例角化症に対する有効性を文献的に検討した.【方法】医薬品医療機器総合機構のホームページで一般用を含むヨクイニンに関係する医薬品の添付文書の適応症を確認し,医学中央雑誌とPubMedを用いて,脂漏性角化症に関連するヨクイニンの論文を検索し,該当した論文を精査した.【結果】ヨクイニンを配合する医療用医薬品は36品目あり,そのうちヨクイニンエキスの2品目は尋常性疣贅と青年性扁平疣贅に適応があり,麻杏よく甘湯エキスはイボを適応症としていた.一般用医薬品・要指導医薬品には,ヨクイニンを主成分とする製剤(狭義のヨクイニン)が7品目,せんじ薬である薏苡仁煎が1品目あり,狭義のヨクイニンの適応症は「いぼ,皮膚のあれ」,薏苡仁煎では,「いぼ,皮膚のあれ,利尿,関節痛」となっていた.医学中央雑誌を用いた検索では,「ヨクイニン」で453,「ヨクイニン」と「いぼ」の組合せで113の論文が抽出され,「ヨクイニン」と,「老人性疣贅」もしくは「脂漏性角化症」で3つの論文が該当したが,いずれもヨクイニンの脂漏性角化症への有効性を述べたものではなかった.また,PubMedではヨクイニンで6論文があるが,脂漏性角化症に関係するものはなかった.【結論】ヨクイニンに脂漏性角化症の適応はなく,有効性を述べた論文はなかった.一般用医薬品などでは平易な病名にするため「いぼ」と表現しているが,ヨクイニンの適応疾患として老人性疣贅は含まれず,ウイルス性疣贅のみを指すと考えられる.患者の誤解をなくすため,適切な啓発活動が必要である.

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