著者
門田 利人
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.45, pp.S4-1, 2018

<p> 1960~80年代(昭和の後半)、日本は薬害・公害の時代であった。ペニシリン/ショック、サリドマイド禍、コラルジル/リン脂質症、キノホルム/スモン病、有機水銀/水俣病、カドミウム/イタイイタイ病、ヒ素/ミルク事件、PCB/カネミ油症など枚挙にいとまがない。これらの痛ましい事故・事件の教訓から薬物安全性評価の充実が希求された。医薬品分野では、1984年「薬審第118号、医薬品の製造(輸入)申請に必要な毒性試験のガイドライン」が策定され、Minimum Requirementとして準拠が求められた。臨床適用以外の経路でも単回投与試験を実施し、LD50値や無影響量を算出する目的で数多くの動物が犠牲となった。ヒトへの外挿性が乏しいと知りつつも試験を実施した。これらへの反省は、国際調和という形で促された。1991年(平成3年)の効率的な新医薬品開発を目指した規制の国際調和会議(ICH)の設立である。日本は、ICHからの勧告を受け入れ、無影響量から無毒性量へと改めた。ICHでは、日本は欧州と共に非げっ歯類の長期反復投与試験の投与期間を最長6か月と主張したが、9か月で妥協・合意せざるを得ないという苦い経験もした。今日まで、S1(がん原性試験)からS11(小児用医薬品の毒性試験)まで、改訂を重ね、また、新たなトピックについて議論されてきた。このように、平成の30年間は、国際調和した規制・ガイドラインが策定・施行された時代であったが、平成時代の終わりとともに、ガイドラインに依存した画一的試験の時代から医薬品毎に熟考された多様な試験の時代となることを期待したい。</p><p> 核酸医薬品、遺伝子治療、再生医療などの革新的医療技術において、本当に従来型の毒性評価方法は通用するのか。50年間も医薬品の毒性評価に関わった経験から、新たな時代に毒性評価に携わる若い毒性研究者にとって参考になる情報を提供できたら幸いである。</p>

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