著者
星 香里
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.45, pp.S16-1, 2018

<p> ドーピングとは、スポーツの世界において競技能力の向上を目的として、世界統一のルールで禁止されている物質や方法を使用することであり、フェアプレーの精神に反してスポーツの価値を脅かす行為であるとともにアスリートの健康を害する行為で絶対に許されない。</p><p> 我が国のアンチ・ドーピングに関する状況としては、日本人アスリートのドーピング違反確定率が他国と比較して格段に低いことや、世界ドーピング防止機構(WADA:World Anti-Doping Agency)の創設時から文部科学副大臣が継続して常任理事を務め、国際的なアンチ・ドーピング活動に貢献してきていること、また、我が国唯一のアンチ・ドーピング機関である日本アンチ・ドーピング機構(JADA:Japan Anti-Doping Agency)を中心とした検査活動、教育・啓発活動等が安定して実施され、着実に成果を上げていることなどから国際的にも高い評価を受けている。</p><p> 一方、国際的な状況としては、昨今、ロシアで起こったとされる組織的ドーピングの問題がリオデジャネイロと平昌のオリンピック・パラリンピック競技大会におけるロシア選手の参加に影響し、両大会に影を落とす結果となったり、過去の大会時に採取・保管された検体から禁止物質が検出されて、後から記録やメダルが剥奪されるという事案もたびたび発生しており、WADAを中心としたアンチ・ドーピング活動のより一層の充実が求められているところである。</p><p> 2年後に迫った東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催国として、日本に対しては、国際オリンピック委員会(IOC:International Olympic Committee)やWADAからドーピングのないクリーンな大会にしてほしいと強い期待が寄せられている。</p><p> その期待に応えて万全のアンチ・ドーピング体制を整えるべく、日本政府としては、まず文部科学省内に「アンチ・ドーピング体制構築・強化のためのタスクフォース」を設置し、現状と課題を明らかにするとともに、課題解決に必要な方策について取りまとめた。同タスクフォースの議論においては、喫緊に取り組むべき方策の中に法的措置が必要な事項もあると整理された。これを受けて、超党派のスポーツ議員連盟にアンチ・ドーピングワーキンググループが設置され、我が国初となるアンチ・ドーピングに関する法律の制定に向けた議論が重ねられて、2017年4月にスポーツ議員連盟総会で法律案が了承された。現在は、国会への提出に向けて諸々の手続きが進められているところである。</p><p> 本講演では、我が国におけるドーピング違反の具体的事例とドーピングを防止するための様々な取組を紹介するとともに、国内外のアンチ・ドーピング体制やアンチ・ドーピングに関する法案の内容、2020年東京大会に向けた取組等について、紹介したい。</p>

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