著者
石原 謙
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.56, pp.S162, 2018

<p>従来医療現場では少しでも危険な可能性があれば回避・忌避する習慣が尊重された。人の命や健康を守る立場から当然でありそれ自体は好ましい。20年前の心臓ペースメーカでは、当時の携帯電話からの電波強度で誤動作をすることが実験でたしかめられていた。しかしペースメーカー自体は当時から何重にも安全に作られていた。生存を脅かす機能停止はせぬよう設計されていた。さらにペースメーカのEMI耐性は著しく改善され、10年ほど前からの製品では医療現場を含めた生活圏における無線電波による機能異常は発生していない。PCやタブレット端末などの電波を発するNW機器についても医療機器に致命的障害を与える医療事故は報告されていない。結果としてこの20年、電波干渉による心臓ペースメーカでの死亡事故は起きていない。 病院での入院患者では携帯電話や無線LANが普段以上に有り難い存在となる。家族や友人との会話は回復への大きな励みになるし、治療部位以外は健常で仕事ができる状態の患者にはNWは必須である。 医療用電波を利用したME機器はゾーン設計の元で適切に使用されてはいるものの、無線LANや携帯電話などの無線端末が、利便性が高いために数多く導入され野放し状態に近い。 医療現場における電波利用の実態を調査し、さらに安全に電波利用を推進することが望まれ、管理監督強化ではなく、医療現場の負担を軽減する方向での活用を促進する合理的なガイドラインが望まれる。</p>

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