著者
中川 昌彦
出版者
森林計画学会
雑誌
森林計画学会誌 (ISSN:09172017)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.33-35, 2018
被引用文献数
2

北海道の十勝平野は春耕期に風害を受けやすい地帯であり,カラマツを中心とした耕地防風林が発達した。春耕期におけるカラマツの耕地防風林の防風効果については,開葉前や開葉直後のため充分ではないという意見があり,赤間らは,「防風林の多面的機能と造成管理のための解説書」の中で,防風林の適樹種としてトドマツまたはアカエゾマツと思われる常緑針葉樹の写真を掲載し「春先の十勝風に効果を発揮する針葉樹(鹿追町)」と解説している。一方で,大島らや北海道立林業試験場は,冬季に耕地防風林の調査を行い,落葉期のカラマツ耕地防風林の周囲にもトドマツと同程度の雪丘がみられることから,落葉期のカラマツにも常緑樹であるトドマツと同程度の防風効果があるとしている。このような相反する見解がある中,最近になって中川は,十勝平野の郷土資料におけるカラマツ耕地防風林に対する防風効果の認識についての記述を収集し,十勝平野の農家や農業関係者は春耕期におけるカラマツの耕地防風林の防風効果を高く評価していたことを明らかにした。耕地防風林の土地所有者はそれぞれの農家であるが,その普及指導は北海道十勝支庁(現十勝総合振興局)林務課職員が担ってきた。このため,林務課職員が春耕期におけるカラマツの耕地防風林の防風効果についてどのように認識していたのかは,非常に興味のあるところである。そこで本調査では,1998年に北海道十勝支庁が発行したパンフレット「防風林を見直そう」)と,1994年度に十勝支庁林務課が北海道農林土木コンサルタント(株)に委託して実施した防風林実態調査の結果から,20年前の十勝支庁林務課職員の認識を明らかにした。

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