著者
今井 聖
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.121-138, 2017

本稿の目的は,駅構内での女性への痴漢被疑者に対して行われた警察のワークを,「ワークのエスノ メソドロジー研究」の立場から考察することである.本稿では,被疑者を警察署に任意同行するため の説得と,警察署での実質的な事情聴取という2つのワークを分析する. これらの警察のワークは,警察官と被疑者との会話的やりとりを通して遂行される.従来研究にお いて,「ストリートレベルの官僚」としての警察官による裁量の行使が指摘されていたが,実際の会話 的相互行為に基づいた研究は十分取り組まれてこなかった. 本稿では,ある実際の「痴漢事件」において,交番および警察署で行われた,警察官と被疑者によ る会話的やりとりを分析し,それにより達成される警察のワークを記述する. 分析からは,主として次の2点が示される.第一に,交番警察が被疑者を任意同行する際に,被疑 者にとっての必要性を強調することで「説得」を行っていること.第二に,警察署警察が,被疑者と 痴漢被害を訴える女性の同行者との間の相互行為を推断的に記述していることである.以上の分析知 見を踏まえ,警察のワークが被疑者に困難な「現実」をもたらし得るものであったことを指摘する.

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