著者
ボイコフ ジュールス 井谷 聡子
出版者
日本スポーツとジェンダー学会
雑誌
スポーツとジェンダー研究 (ISSN:13482157)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.62-84, 2018

本発表は3部構成となっている.まず,第1部で「祝賀資本主義」理論についてその根本的主張を説明しながら紹介し,この理論がナオミ・クラインの「惨事便乗型資本主義」とどのように関係しているかを説明する.祝賀資本主義という概念は,近代オリンピックについての考え方を体系付けるのに有用であり,21世紀におけるオリンピック大会の根幹となる政治的,経済的力学をもっともよく捉えるものであると考える.第2に,特定のオリンピック大会の例を引きながら,祝賀資本主義が開催都市における特定の政策や実践の中でどのような形態をとるのかについて論証する.2010年のバンクーバー冬季オリンピック,2012年のロンドンオリンピック,2014年のソチ(ロシア)冬季オリンピック,そして2016年のリオデジャネイロオリンピックの例を見ながら,祝賀資本主義がいかに反オリンピック運動を刺激しうるかを示す.第3に,東京が2020年のオリンピック大会開催に向けて準備する中で,祝賀資本主義がどのように現れているのかを検証する.

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ナオミ・クラインは危機的状況に乗じて市場原理主義を導入することを「惨事便乗型資本主義」(Shock Doctrine)と呼び。影響を受けたジュールス・ボイコフは五輪を「祝賀資本主義」(Celebration Capitalism)と論じてる。COVID-19禍(惨事)×五輪(祝賀)。日本は両方に直面

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