著者
佐藤 泉
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.98, pp.29-43, 2018

<p>夏目漱石は、西洋的近代性の影響下で進行した日本の近代化の中に、歴史の進歩ではなく、歴史の喪失を見出した。その言説は、「日本と西洋」「東洋と西洋」といった地理的な道具立てと、そこから引き出される権力関係を含意するという意味において地政学的な枠組みを備えるものだった。本稿では、まず、漱石の言葉をひとつの源泉とする日本の近代という主題がどのように形成され、歴史の中で変容していったのかを考察し、その限界を明らかにする。同時に、現在の問題意識の中に、この主題を再利用することができないかを展望する。</p>

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