- 著者
-
福長 秀彦
- 出版者
- NHK放送文化研究所
- 雑誌
- 放送研究と調査 (ISSN:02880008)
- 巻号頁・発行日
- vol.69, no.8, pp.100-110, 2019
本稿では、誤情報・虚偽情報の打ち消し報道を行うに際して、マスメディアとして留意すべき事柄をピックアップした。留意点は以下の通り。■打ち消し報道は誤情報・虚偽情報と比べ「新奇性」=「ニュース性」が弱いので拡散力が弱いと考えられる。従って、打ち消し報道は繰り返し行う必要がある。 ■打ち消し報道を行うタイミングが早すぎると、誤情報・虚偽情報をまだ知らない人にまで伝え、新奇性の強い誤情報・虚偽情報の中身だけが独り歩きしてしまうおそれがある。 ■誤情報・虚偽情報に惑わされないよう呼びかける打ち消し報道のメッセージは、受け手の心理的抵抗や反発を招かないような工夫が必要である。 ■流言の中には事実と間違いが混然としたものも多い。それらを「デマ」という言葉で一括りにして表現すると、すべてを事実無根、ウソと決めつけてしまうことになりかねない。 ■偽動画はAIのマシンラーニング(機械学習)の手法を悪用して、ますます巧妙化するおそれがあり、アメリカではメディアや大学などが偽動画を見分ける技術の研究を行っている。日本国内でも精巧な偽動画が出回る可能性がある。 ■テレビやラジオで打ち消し報道を見聞きしても、聞き逃しや聞き間違い、早合点をしてしまうこともある。放送画面からネット上などの打ち消し情報(活字・図表)に随時アクセスできれば便利である。