著者
山本 奈生
出版者
カルチュラル・スタディーズ学会
雑誌
年報カルチュラル・スタディーズ (ISSN:21879222)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.59-79, 2018

本稿は現代日本における大麻自由化運動を、特に90 年代以後の展開に注目しながら整理するものである。大麻合法化が進む欧米諸国において、大麻問題は政治的なリベラル/保守の係争として位置づけられ、同性婚や銃規制問題と同様にしばしば争点化されている。ここでは大麻自由化運動が、広範なリベラル派支持層の賛同を得つつ法規制の変化に現実的な影響を与えてきたが、日本での状況は大きく異なっている。日本における大麻自由化運動は、60 年代のビートニク/ヒッピーに端を発し、90 年代から現在まで複数のフレーミングを形成しながらネットワーク化されてきたものである。ここでの運動は一つの団体に還元できるものではなく、多様な問題関心と志向性を持つ諸個人らが織りなす群像であるが、この潮流は社会学界においても十分には知られていない。そのため本稿では一つの出来事や団体に対して集中した解釈を行うのではなく、まずはグループおよび諸個人が形成してきたムーヴメントの布置連関を把握しようと試みた。現在の大麻自由化運動は「嗜好用を含めた全般自由化」「医療目的での合法化」「産業利用の自由化」など複数の目標を掲げながら、同時に言説枠組みの展開においてもアカデミックな研究に依拠するものから、スピリチュアリズムやナショナリズム、陰謀論に至るまで散開している。その後景には、社会運動というよりはサブカルチャーとしての精神世界やニューエイジ、レゲエ文化の展開があり、こうした音楽や文化と大麻自由化運動はクロスオーバーしながら進展してきた。本稿では、90 年代以後の日本における状況を整理するためにまず前史を概観した後に、諸グループがどのようにして活動と主張を行ってきたのかを捉え、社会状況に対するそれぞれの抵抗のあり方について論じた。

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