著者
佐藤 恵
出版者
福祉社会学会
雑誌
福祉社会学研究 (ISSN:13493337)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.56-72, 2013

阪神大震災時,障害者には,震災以前からの生活上の困難が顕在化し,被害が集中的に現れて「震災弱者」化が進行した.①安否確認からの漏れ,情報へのアクセス遮断,②避難所・仮設住宅などの物的環境面のバリア,③介助の不足,④「震災弱者」への特別の配慮を行わない「一律『平等』主義」と,独力での生活が困難な障害者に対する「施設・病院収容主義」,⑤避難所等での排除的対応,⑥経済的な復興格差.これらの困難を抱えた障害者を支援する「被災地障害者センター」(現:拓人こうべ)の活動では,「顔の見える関係」を重視しつつ,障害者の自己決定を核とした自立を支える中で,種々の支援技法が編み出されていった.以上の①~⑤については「ゆめ風基金」からの開き取りにおいて,東日本大震災でも発生していることが確認され,⑥の復興格差に関しても経済格差に加えて地域格差も生じる蓋然性が高い.こうした阪神大震災の教訓が活きていない状況で行われている,ゆめ風基金の被災障害者支援においては,第一に,個人レベルの支援に重点が置かれ,第二に,自立生活を送る障害者が少ない東北において,支援の担い手としての障害者を育てることが意識されている.震災の風化が進行しつつある現在,ヴァルネラブルな被災障害者に向けた「支え合い」の実践は喫緊の課題であり,また,現場での実践に定位した社会学的記録・分析の作業が必要である.

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