著者
勝 成仁
出版者
待遇コミュニケーション学会
雑誌
待遇コミュニケーション研究 (ISSN:13488481)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.102, 2020

<p>日本語では、相手を呼ぶとき呼び捨てで名前を呼ぶだけでなく、「自身の性別」「相手の性別」「立場関係(年上・同世代・年下)」「親疎関係」など、様々な要因によって「~さん」「~くん」「~ちゃん」と呼ぶこともあり、これらの要因は複雑に絡み合っている。先行研究では、日本語の呼称の待遇的機能に着目したものは多く見られるが、日本人大学生や日本語学習者の呼称の使用実態に着目した研究は少ない。そこで本研究では、日本の大学に所属している日本人大学生(79人)と日本語学習者(34人)に対し、「①呼称選択に関して、日本人大学生と日本語学習者の間にどのような差があり、それはどのような要因によるものか」「②日本の大学に所属している日本語学習者の中で日本語のレベルや日本への滞在期間によって呼称選択の要因に変化はみられるか」という2点を明らかにするためにGoogle-formによる質問紙を用いた調査を行い、決定木を用いて分析した。</p><p>全体の結果から、呼称を選択する際に「自身の性別」は結果に影響を与えておらず、呼称を選択する最も強い要因は「立場関係」であり、<年上>に対して「苗字さん」(35%)が最も多く使われていたことが分かった。次に<同世代、年下>に対しては「相手の性別」による影響が強く、<同世代、年下>の<女性>に対しては「苗字さん」(30%)が最も使われていた。その中の<親しい相手>に対して、日本人大学生は「呼び捨て(名前)」(37%)を、日本語学習者は「名前ちゃん」(35%)を最も使用しており、この結果から日本語学習者が名前に「ちゃん」を付け加えることで相手への親しみを表している可能性が示唆された。次に日本語学習者のみの結果から、「日本語のレベル」は結果に影響を与えていないことが分かり、呼称を選択する最も強い要因は「自身の性別」であることが分かった。<男性>の日本語学習者(13人)は「呼び捨て(名前)」(32%)を、<女性>の日本語学習者(21人)は「苗字さん」(51%)を最も使用していることが分かった。また、「滞在期間」によっても有意な差は出たが、結果が「<1年未満><3年以上>」と「<1~2年><2~3年>」で分かれ、長さに比例して変化が見られたわけではなく、この結果からだけでは「滞在期間」が呼称選択要因に与えている影響について明らかにできなかった。今後は日本人大学生や学習者へのインタビュー調査を通して、今回の調査で明らかにできなかった点や呼称を選択する際の困難点などについて調べていく必要があると考えられる。</p>

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こんな論文どうですか? 日本人大学生と日本語学習者の呼称の選択に影響する諸要因について:決定木分析の結果からの一考察(勝 成仁),2020 https://t.co/QPDP11eEz3 <p>日本語では、相手を呼ぶとき呼び捨てで名前を呼ぶだけでな…
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