著者
北岡 志保
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学会年会要旨集
巻号頁・発行日
vol.93, pp.3-YAL-1, 2020

<p>既存の抗うつ薬の多くはモノアミンなどの神経伝達物質の作用を調節するが、一部の患者で十分な効果が得られないため、新たな創薬標的の開発が期待されている。近年、うつ病などの精神疾患患者の血中で炎症関連物質が高値を示すことから、炎症仮説が注目されるようになった。しかし、うつ病発症と炎症との因果関係は不明であった。社会や環境から受けるストレスは精神疾患のリスク因子であることから、動物に繰り返しストレスを与える反復社会挫折ストレスがうつ病の動物モデルとして使用されている。反復ストレスは情動変容を誘導し、同時に特定の脳領域のミクログリアを活性化することを見出した。この研究に端を発し、反復ストレスによる情動変容の誘導における脳内炎症の関与とその分子実体を明らかにした。また、脳内炎症の関与がすでに知られている神経変性疾患で、炎症を標的とした創薬基盤を開発した。本講演では、精神・神経疾患の病態形成に関与する脳内炎症について最新の知見を紹介したい。</p>

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