著者
東村 玲子
出版者
地域漁業学会
雑誌
地域漁業研究 (ISSN:13427857)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.33-56, 2015

<p>越前がには,他の水産物より先駆けて1990年代初頭には,既にブランドが確立していた。そのブランド評価を,177件の消費者アンケートを基に行った。消費者は味覚に関しては非常に高く評価し,産地が分かることやタグに関する安心感もあり,また他の産地のものより品質も高く感じている。価格については高すぎると感じる人は多いものの,むしろ価格が高いことが越前がにをブランド品として消費する行動につながっているとも考えられる。またリピータへの可能性も高い。これらの結果に基づき,越前がにが消費者の主要な価値,すなわち①美味しいもの,②旬,③地域の名産品,④最高級品・ブランド,⑤たまの贅沢,を満たして高い満足感を与えていることを明らかにした。①から③については,他の多くの水産物にも多くあてはまり,ブランド化にあたって参考となるが,④と⑤はブランド化対象の水産物によって異なる。消費者が越前がにを消費するための情報探索コストは,インターネットの普及により低くなり,さらに宅配便の普及によって利便性も増したものの,最終的には店頭や電話での消費者とのコミュニケーションが重要であることが指摘出来る。現在では個別の直売店や旅館のリピータも多いが,それは従来の個別経営体が越前がにを大切に扱って来た努力の結果であり,今後とも共存・共栄に向けて,越前町全体が産地としてリピータの獲得・維持に努めることが望ましい。</p>

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