- 著者
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野中 健
片岡 千賀之
- 出版者
- 地域漁業学会
- 雑誌
- 地域漁業研究 (ISSN:13427857)
- 巻号頁・発行日
- vol.50, no.1, pp.1-20, 2009
<p>長崎県は煮干加工業において全国屈指の産地である。まき網など地域の漁船漁業と密接な関係を保ち,設備投資や技術革新により生産性を向上させ,漁村加工業として地域経済に寄与している。小論では,長崎県の煮干加工業の体制と持続発展に係るシステムについて,生産体制と共販流通の両面から考察した。</p><p>生産体制では,長崎県では,煮干主原料のカタクチイワシなど前浜原料が中小型まき網を中心に比較的安定して漁獲され,施設整備や技術革新により生産が維持された。まき網と煮干加工の両者は歩合制に基づく委託加工制で結びつき,このシステムは生産性の向上,製品の高品質化,投資・経費の節減などに対するインセンティブが働き,生産を刺激している。地域ごとの条件に照らして,委託加工と自己採捕,量産型と品質重視型などの組み合わせで経営が構成されている。</p><p>流通体制に関しては,県漁連共販に大きく依存し,高い共販率が維持されている。県漁連共販出荷は年間を通して行われ,取扱量や入札参加者が多いため,価格形成において優位性があり,代金回収が確実であるなど,長崎県の地理的不利や小規模加工業者が多く販売力が乏しいなどの隘路を補っている。また,共販は,指定商社および付属商社制度をとることによって,煮干の全国販売,用途別利用配分を容易にし,そのことがまた,集荷力を高め,多様な煮干加工形態を支えている。</p>