著者
入江 さやか
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.70, no.8, pp.18-34, 2020

「令和元年台風19号(東日本台風)」は、東日本各地に記録的な豪雨をもたらした。気象庁は、過去最多となる13の都県に「大雨特別警報」を発表。長野県の千曲川や福島県の阿武隈川など8つの県の71河川・128箇所で堤防が決壊、13の都県に被害が及ぶ広域災害となった。NHK放送文化研究所では、台風19号で被害を受けた長野県長野市、宮城県丸森町・石巻市、福島県本宮市・いわき市の5つの自治体において、浸水被害が出た地域の住民3,000人を対象に、郵送法による世論調査を実施した。本稿では、このうち、長野市の調査結果を検討した。千曲川が決壊した長野市長沼地区では、回答者の8割が自宅を離れて避難場所などへの「立ち退き避難」をしていた。避難を始めたタイミングも早く、千曲川の水が堤防を越える前に大半の住民が避難していた。立ち退き避難を始めたきっかけを聞いたところ、避難勧告などの「防災情報」や、「周囲の人の声がけ」、「テレビの警戒呼びかけ」をあげた人が多かった。また、長沼地区の住民の6割は、過去の水害経験や、洪水ハザードマップ、地区内に設置された想定浸水深を示す標識などを通じて、自宅が浸水するリスクを認知していた。未明に大河川が決壊したにも関わらず、この地域では人的被害が抑えられた。その背景には、住民の防災リスクの認知と、防災情報に対する的確な反応があったと考えられる。

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