- 著者
-
松崎 泰子
- 出版者
- 日本重症心身障害学会
- 雑誌
- 日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
- 巻号頁・発行日
- vol.39, no.2, pp.226, 2014
はじめに筋緊張の強い重症心身障害児(者)は、発汗が多く皮膚トラブルを生じやすい。その予防のため市販の涼感品Aやわらか雪枕® Bアウトラスト®シーツを使用し、その効果を検討するため、体温測定と皮膚のPH値測定を行った。健康な皮膚のPH値は弱酸性だが、発汗が持続するときや皮膚の汚れや感染などでPH値が上昇する。皮膚のPH値低下が皮膚の健康度と相関すると考え涼感品の効果の指標とした。対象筋緊張が強く夏季には発汗が多い重症児(者)6例。男性3名、女性3名、年齢14〜40歳。基礎疾患は脳性麻痺3、SSPE1、急性脳症後遺症1、頭部外傷後遺症1。全例痙直型四肢麻痺、横地分類A1。方法期間は2013年6月〜9月、環境温度は24〜26℃、湿度60〜80%。背部が発汗しているときで、涼感品不使用(コントロール)、A雪枕(背部に当てる)、Bシーツ(下に敷く)使用のそれぞれについて、直前と2時間後のPH値(背部)と腋窩の体温を4回ずつ測定した。PH値は皮膚用測定器(スキンチェッカーMJ120®) を使用。統計解析はWilcoxonの符号付順位和検定を用いた。結果不使用では体温低下は3/6、体温上昇は3/6。背部のPH値は4/6は上昇、2/6は変化なし。A雪枕では体温低下は6/6(p<0.05)、背部のPH値は3/6は上昇、2/6は変化なし、1/6は低下。Bシーツでは体温低下は4/6、2/6は変化なし。背部のPH値は5/6は低下(p<0.05)、1/6は変化なし。考察雪枕では体温低下効果はあったが、背部のPH値はコントロールとの有意な違いはなかった。シーツでは体温低下効果はあるも雪枕より劣っていたが、背部のPH値を低下させる効果があった。したがって、涼感品としての体温を低下する効果は双方ともあるが、皮膚の健康度の維持効果はシーツの方が勝っていると考えらた。また、腋窩の体温低下と皮膚のPH値低下は相関しないことから、涼感品の効果判定には皮膚のPH値測定も取り入れることが有効と考えられる。