著者
森 康則 斉藤 雅樹 早坂 信哉
出版者
一般財団法人 日本健康開発財団
雑誌
日本健康開発雑誌 (ISSN:2432602X)
巻号頁・発行日
vol.42, pp.49-56, 2021

<p><b>背景・目的</b> COVID-19パンデミックに伴う、いわゆるコロナ禍の一方で、温泉地に新たに「ワーケーション」の需要が喚起されつつある。本研究では、コロナ禍以前の温泉地において、ビジネス目的の滞在実態の把握を目的に、解析を試みた。</p><p><b>方法</b> 環境省が全国の温泉地を対象に実施している大規模調査「全国『新・湯治』効果測定調査プロジェクト」のデータを用いた。同プロジェクトの調査シートの中から、温泉地旅行の目的を「ビジネス、研修など」と回答した群(N=255)と、それ以外の目的と回答した群(対照群N=7,196)について、有意差検定を行った。</p><p><b>結果</b> 対照群の年齢(58.2±16.1歳)に比べてビジネス目的の温泉地滞在者は年齢が有意に低く(49.1±14.2歳)、また、性別は対照群が男性48.1%、女性51.9%に対し、ビジネス利用群は男性75.8%、女性24.2%と、有意に男性が多かった。また、温泉地滞在期間は、対照群の日帰りが29.1%に対しビジネス利用群が12.0%とビジネス利用群が低く、対照群とビジネス利用群の一泊二日はそれぞれ54.3%と64.3%、二泊三日はそれぞれ7.8%と15.1%と、ビジネス利用群には日帰りよりも、一泊から二泊程度の宿泊を伴う滞在が好まれていることが示された。また、ビジネス利用群の宴会の実施割合(10.6%)は、対照群の3.6%と比べて有意に高かった。温泉地滞在後の感想や健康状態の変化は、全般的に対照群の方がポジティブな効果を回答する者の割合が高く、従来のビジネス目的の温泉地滞在者は、対照群に比べて健康改善効果などを比較的実感できていなかった状況が伺われた。</p><p><b>考察</b> 本研究によって明らかになったCOVID-19パンデミック以前の温泉地におけるビジネス利用者の状況は、今後、有効な温泉地におけるワーケーションの普及展開方法を議論する上で、重要な示唆になるものと考えられる。</p>

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