著者
花田収悦 高橋宗雄 長野宏宣 田野実裕之
雑誌
情報処理学会研究報告ソフトウェア工学(SE)
巻号頁・発行日
vol.1982, no.44, pp.1-10, 1982-11-30

大規模ソフトウェアシステムを対象とするバグ原因解析自動化方式及びこれに基づく試作経験について述べる。大規模ソフトウェアの運用開始後のバグ原因解析は,その開発に従事した熟練者の知識に依存しているのが現状である。運用サービス中に発生したバグの原因解析のための情報としては,システムが内部矛盾を検出した時点で出力されるメモリ情報のダンプリストが与えられる。その解析の手順はシステムを構成するプログラムのデータ領域の内容から実行の経過や矛盾を生じた原因を推定するものである。この手順のうち,データ内容の検索と値のチェックについては機械化による高速かつ網羅度の高い作業が可能と考えられる。ここでは,プログラム中で使用するデータ構造に対して与えられたデータチェック条件を用いて,バグ発生時,あるいはバグ再現時のメモリ内容を自動チェックする方式について提案し,この方式の試作システムCHASE (CHecking and Analyzing System for program Errors)について述べる。はじめに既存のテストデバッグ自動化方式で採られてきたソースコードへのチェック条件挿入法(アサーション)を大規模システムへ適用する場合の問題点と我々の採った解決法について述べる。次に,チェック条件の記述方法とこれを基にしたデータ診断の実現方法について述べる。更に,チェック対象とするメモリ情報の収集方法を示し,このうちの1つであるバグ再現時の実行履歴の圧縮方法について述べる。最後に,試作したCHASEを2つのコンパイラのバグ解析に適用した結果について述べる。

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