著者
松井 啓司 中村 聡史
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.3, pp.970-978, 2018-03-15

人は楽しい時間が過ぎるのを早く感じたり,退屈な時間がいつまでも終わらないと感じたりすることがある.これは時間評価を変化させる要因の1つである時間経過に対する注意によって発生する現象であるが,2つ以上の事象に同時に集中することは容易でないため,なにか別の作業をしながら時間感覚を自分の思いどおりに変化させることは困難であるとされてきた.ここで,人間の周辺視野には視覚情報を無意識的に処理する特性があることが明らかになっている.この周辺視野の情報処理能力を活用し,無意識的に時間評価を変化させる要因を操作することで,人の時間感覚の操作が可能であると考えた.そこで,PCでの作業時に周辺視野へ視覚刺激を提示することで,人の時間感覚がどのように変化するのかを調査する.その結果,提示速度の変化量によって時間評価が変化し,視覚刺激の提示速度が加速するほど時間を短く感じ,減速するほど時間を長く感じる傾向が見られた.また,実験協力者の視線情報を分析することで周辺視野への視覚刺激提示が作業を阻害していないことを明らかにした.

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