著者
杉森 健 三武 裕玄 佐藤 裕仁 小栗 賢章 長谷川 晶一
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.1697-1707, 2020-11-15

VRメタバースやVTuberなどのように,モーションキャプチャデバイスを用いてリアルタイムにアバターを操作する機会が増えるにつれて,アバター同士接触することでコミュニケーションをとったり,アバターと物体が衝突する機会が増えている.しかし,現状ではアバター同士やアバターと物体が接触しても貫通してしまうか,不自然な動作になってしまう.そこで本研究では物理シミュレーションを用いて自然な接触動作を自動生成する.その際に問題となる追従遅れをフィードフォワード制御により解決する.提案手法により,これまでできなかったアバター同士やアバターと物体の自然な接触が可能であることを示す.さらに,提案手法ではこれまで一般的であった接触している振りの演技が不要になることで,演者の負担が軽減されることを示す.
著者
酒居 敬一 光成 滋生 成田 剛 石田 計 藤井 寛 庄司 信利
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.1028-1038, 2002-04-15

近年の汎用パーソナルコンピュータに多く使われているIA-32プロセッサは過去との互換性のために命令体系はCISC的である.しかし内部動作はRISCマイクロ命令への変換,ハイパーパイプライン,アウトオブオーダ,などRISC的アーキテクチャが多数取り入れられている.さらにSIMD的演算命令の搭載によりデータ並列処理を実現している.とはいえその新しい機構に応じたコードを生成するコンパイラはまだまだ少数であり,また対応していたとしてもコンパイラ独自の拡張C言語による記述が必要であることが多い.そのため通常のC言語による記述を主体としたベンチマークではプロセッサの正当な評価を行いにくい.そこで我々は実用的なアプリケーションとしてMP3エンコーダを選択しコード全般にわたってアセンブリ言語による最適化処理を行った.その結果C言語によるコードに対し2倍から3倍の高速化を達成した.
著者
城所 宏行 末廣 芳隆 ブルシュチッチ ドラジェン 神田 崇行
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.1203-1216, 2015-04-15

公共の場で活動するソーシャルロボットが期待されている.ソーシャルロボットは人々の興味を引き,かつ有意義なサービス提供ができる可能性がある.しかし,興味を引かれてロボットと相互作用を始めた子供たちの行動が,ときに行き過ぎ,ロボットに対して攻撃行動を起こすことが明らかになってきた.観察実験によって,ロボットに関心を示した子供のうち,合計で117回の執拗な攻撃行動を観測した.子供たちはロボットに暴言を吐き,蹴り,叩くなどの行動でロボットの活動を執拗に妨害していた.本論文では,ロボットに対する執拗な攻撃行動を「ロボットいじめ」と名付け,この現象の緩和を試みる.この目的のために,子供のロボットいじめ行動をモデル化し,ロボットがモデルを用いてロボットいじめ行動を事前にシミュレートし回避可能にさせる.モデルを歩行者シミュレーションへ導入することで,子供のロボットいじめ行動をシミュレーション上で再現できるようにした.また,本論文では,ロボットいじめ行動のシミュレーションをロボットの将来行動の計画に用いる,というシミュレーションに基づいた行動計画方法を提案する.ロボットは,センサシステムから現在の状況を取得し,自らの行動に対して子供たちがどのような行動をして,その結果,近い将来どのような状況が生じるのかをこのシミュレーション上で検討する.このシミュレーション結果を比較することで,ロボットいじめが起きにくい行動を選択する.この「ロボットいじめのシミュレーションに基づいた行動計画」システムを構築した.実際のショッピングモールでシステムを用いた実験を行ったところ,ロボットいじめの生起を抑制できたことを確認した.
著者
柴田 博仁
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.1204-1213, 2009-03-15

本稿は,ディスプレイ構成の違いが業務にもたらす影響を定量的に測定することを狙いとするものである.知的財産管理業務を行う8人の被験者を対象に,17インチのシングルディスプレイ環境(Small条件)から,24インチの大画面ディスプレイ環境(Large条件),あるいは2つの17インチディスプレイを並置する多画面ディスプレイ環境(Dual条件)へと移行した前後で,およそ2週間ずつ実業務でのウィンドウ操作ログを取得した.ディスプレイ構成の違いによる業務効率化の程度は,ウィンドウ操作に要する時間の総和でとらえることができるという考えに基づき,ウィンドウの切替え,移動,サイズ変更というウィンドウ操作に要する時間を条件間で比較した.結果として,Small条件では,コンピュータ操作を行っている時間のうち8.5%をウィンドウ操作に費やしていることが分かった.これは,現状のウィンドウシステムにおける改善の必要性を示唆するものである.さらに,Small条件に対して,Large条件ではウィンドウ操作のコスト削減は見られなかったが,Dual条件では13.5%のコスト削減が見られた.これは,ウィンドウ操作に要するコストという観点から,大画面ディスプレイに対する多画面ディスプレイの優位性を示すものである.
著者
石濱 友裕 久野 誉人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 = IPSJ Journal (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.8, pp.2103-2108, 2013-08-15

本論文では,人気のあるペンシルパズル"Slitherlink"の解法について議論する.多くのパズルがそうであるように,SlitherlinkはNP完全であり,整数計画法を使って求解が可能である.このパズルが,これまでに知られている方法よりも簡潔に定式化でき,はるかに高速に解けることを紹介する.This paper addresses a solution to "Slitherlink", one of popular pencil puzzles. Like many other puzzles, Slitherlink is NP-complete and can be solved using integer programming. We show that the puzzle can be formulated more concisely and solved much faster than in the existing formulation.
著者
富沢 大介 池田 心 シモンビエノ
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.11, pp.2560-2570, 2012-11-15

囲碁における定石や将棋における定跡は,主にゲーム序盤で用いられる決まった手順の互角の応酬であり,長い時間をかけて研究・洗練された人智の結晶である.テトリスやぷよぷよなどの落下型パズルゲームの多くでも,展開を有利にするための定石形が存在し利用されている.これらのゲームを囲碁や将棋と比較すると,自分と相手双方に盤が存在し邪魔は間接的にしか行われない一方で,操作対象の与えられ方(俗にツモと呼ばれる)にランダム性があり,状況に応じて用いる定石や配置順を変えていかなければならない難しさがある.本論文では,関連性行列という形で状態と定石を表現する定石形配置法を提案し,これをぷよぷよにおける連鎖の構成に適用することでその有効性を示す.In Go and Shogi, standard patterns and sequence of moves have been developed over the years by human players, mainly in the opening of the game. Such standard patterns, used by expert players to reach a winning position, also exist in tile-matching video games like Tetris and Puyo-Puyo. In tile-matching games, the interaction between the players is only indirect through separate boards, but the randomness of the tiles appearing in the game is a major difficulty, not found in Go or Shogi. In this paper, we propose a tile arrangement method for finding good moves in tile-matching games, through the use of a relevant matrix that represents the current situation and the knowledge of standard patterns. We show the effectiveness of the proposed method by applying it to the construction of chains in Puyo-Puyo. The resulting Puyo-Puyo AI player is significantly stronger.
著者
池田 惇 竹川 佳成 寺田 努 塚本 昌彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.51, no.11, pp.2112-2122, 2010-11-15

近年,人間の動作とその背景に投影された映像を組み合わせて,演者の動作が映像に作用しているように見せるパフォーマンスが注目されている.しかし,演者は映像を背にしていたり,ステージ上を移動してさまざまな方向を向いていたりするため,つねに映像を確認しながら演技することはできず,映像と演者が直接掛け合いを行うようなインタラクティブなパフォーマンスを行うことが難しかった.そこで本研究では,装着型/非装着型の情報提示デバイスを用いて演者に映像情報を提示することの有効性を評価する.本研究では実際にインタラクティブパフォーマンスのための演者支援システムを構築し,提示デバイスや提示内容が演技に与える影響を評価した.結果から,提示デバイスによって,演技の自然さが変化することや,提示内容によって,演技動作の精度が変化することが確認された.また,装着型デバイスの使用が演者の演技に与える影響についても評価を行い,対応可能なパフォーマンスを確認した.
著者
椎橋 章夫 大橋 克弘 山名 基晴 森 欣司
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.791-801, 2007-02-15
参考文献数
16
被引用文献数
1

鉄道の自動出改札システム(AFC: Automatic Fare Collection system)は,高密度輸送におけるピーク時の乗降客に対応するための高速性と金券である乗車券を処理するため高信頼性が不可欠である.しかし,無線通信方式のIC カード乗車券は旅客の使用方法に依存するため,データの読み取りの不確実,不完全が発生する(これを「データ抜け」と呼ぶ).東日本旅客鉄道株式会社のSuicaシステムでは「データ抜け」が発生してもシステムを止めることなく,データの信頼性を確保できるように「自律分散整合化技術」を導入していたが,その有効性を評価する手法を持たなかった.そこで,東京工業大学森研究室との連携のもと,自律分散整合化技術の有効性を評価する手法として,機能信頼性評価法を研究し,その評価技術を確立した.この結果,得られた最適パラメータをSuica システムに導入し,その有効性を実証した.The Automatic Fare Collection system (AFC) requires both high performance and high reliability; high performance is necessary to handle the congested passengers during the peak time and high reliability cannot be neglected because the tickets are as valuable as cash. However, the IC card ticket system with wireless communications depends on the way of passengers' behavior, which causes serious problems called "data lacks." In order to assure the reliability of the data in case of "data lacks" without stopping the system, the Autonomous Decentralized Data Consistency Technology has been installed to the Suica system in East Japan Railway Company. However, the evaluation method had not been prepared. This paper, in cooperation with Mori Laboratory, Tokyo Institute of Technology, evaluates the effectiveness of the Autonomous Decentralized Data Consistency Technology by Functional Reliability and optimizes it. This optimization has been installed to the Suica system and performs very well.
著者
渋谷 雄 王震 倉本 到 辻野 嘉宏
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.1566-1569, 2006-05-15

本論文では,ピンイン入力時に携帯電話の傾きを用いて中国語の声調を指定することで選択候補の個数を減らし,中国語漢字入力を高速化する手法を提案している.携帯電話の傾きを利用するため,携帯電話の表面に入力インタフェースを追加する必要がなく,ピンインと声調を同時に入力することができるために入力時間が増加しないという利点がある.提案手法を実装したプロトタイプを用いて実験を行い,提案手法はピンイン入力のみによる従来手法に比べて,約12%高速に入力できることを示している.
著者
Chuzo Iwamoto
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, 2013-12-15

Yosenabe is one of Nikoli's pencil puzzles, which is played on a rectangular grid of cells. Some of the cells are colored gray, and two gray cells are considered connected if they are adjacent vertically or horizontally. A set of connected gray cells is called a gray area. Some of the gray areas are labeled by numbers, and some of the non-gray cells contain circles with numbers. The object of the puzzle is to draw arrows, vertically or horizontally, from all circles to gray areas so that (i) the arrows do not bend, and do not cross other circles or lines of other arrows, (ii) the number in a gray area is equal to the total of the numbers of the circles which enter the gray area, and (iii) gray areas with no numbers may have any sum total, but at least one circle must enter each gray area. It is shown that deciding whether a Yosenabe puzzle has a solution is NP-complete.------------------------------This is a preprint of an article intended for publication Journal ofInformation Processing(JIP). This preprint should not be cited. Thisarticle should be cited as: Journal of Information Processing Vol.22(2014) No.1 (online)DOI http://dx.doi.org/10.2197/ipsjjip.22.40------------------------------
著者
倉橋 真也 村尾 和哉 寺田 努 塚本 昌彦
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.237-248, 2017-01-15

トイレの便器にセンサを組み込むことで,ユーザの生体情報を日常的に取得し,健康管理などに応用できるようになった.トイレは多くの場合,複数人が共用するため採取した生体情報をユーザごとに分類する必要があるが,カメラや音声,体重計による個人識別はプライバシの観点から適切ではない.タッチパネルなどの機器を設置して操作することでの個人識別も可能であるが,本来不要な操作であるため操作を忘れることもある.そこで本論文では,トイレで自然に行われる動作であるトイレットペーパの巻き取りの個人差に着目し,芯に角速度センサを設置したトイレットペーパの回転特性から個人を識別する手法を提案する.評価実験により提案システムの有効性を確認したところ,識別精度は実験室環境において5人から1人を識別する場合に83.9%,実環境において5人から1人を識別する場合に69.2%となった.さらに,提案手法を用いて,体調管理を推進するライフログアプリケーションと,トイレットペーパの使いすぎを抑止するアプリケーションを実装した.
著者
永崎 研宣 大向 一輝 下田 正弘
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.324-334, 2022-02-15

仏教学のための知識基盤の構築にあたり,テキストの共有は重要な課題である.これを効率的・効果的に実現することを目指すデジタル学術編集システムにおいて,近年普及しつつある国際的な画像共有の枠組みであるIIIF(International Image Interoperability Framework)は実装と運用の側面を改善する役割を果たしうる.筆者らは,仏教学のためのデジタル学術編集システムのモデルを設計し,そのモデルにおいて実装・運用面を改善する手段としてIIIFを位置づけ,仏典全文テキストデータベースSAT2018においてそれに基づく実装を行った.これを通じて,デジタル学術編集システムの運用におけるスケーラビリティと持続可能性に関する課題を明らかにした.
著者
伊藤 毅志 松原 仁 ライエルグリンベルゲン
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.43, no.10, pp.2998-3011, 2002-10-15

人間の問題解決の認知過程については数多くの研究が行われてきた.ゲームおよびゲーム理論は昔から人間の問題解決行動の研究において重要な役割を演じてきた.認知研究の題材にゲームを用いることの利点は,ゲームが良定義問題で対戦による評価が容易なことである.チェスで最もよく知られた認知実験は局面の記憶に関するものでDe Grootによって行われた.この研究を継いだSimonとChaseはチャンクという概念を用いてエキスパートの認知能力を説明した.チャンクは一種の情報のかたまりで,チェスでいうとチェス盤上の典型的な駒の配置パターンのかたまりをチャンクと呼んでいる.彼らは強いプレイヤは弱いプレイヤよりも広い配置パターンをチャンクとして記憶していることを示した.将棋の認知研究の第1歩として,我々はまずチェスで行われた認知実験を追試してみることにした.チェスと将棋には認識の点からいくつかの違いがあるので,この追試実験を一度は実施することが必要だと考えた.本論文では将棋を対象とした時間無制限と時間制限の記憶実験を行った.強いプレイヤが弱いプレイヤより成績が良いこと,すなわち広い配置パターンをチャンクとして記憶しているというチェスとほぼ同様の結果が得られた.
著者
鈴木 敏
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.624-630, 2005-02-15

辞書の持つ単語と定義文の関係を利用した,単語のベクトル化のための新しい手法を提案する.提案手法は定義文を再帰展開することにより単語ベクトルを生成する手法である.定義文を単語の集合と見なして再帰展開するときの問題は,この展開が無限に続くため,単語頻度などが計算できなくなることにある.しかし,展開時に一定の重みを仮定することで無限級数の形式に変換でき,計算可能となる.提案手法では,この展開を確率モデルとして扱い,計算の各過程における意味を明確にしている.これにより,応用の見通しが良くなるという長所を得ている.本論文では提案手法の詳細を示すとともに,本手法を単語類似度計算へ適用し,TF-IDFに基づく計算結果と比較・検証を行った.その結果は精度・再現率ともに提案手法が優位であるという明確な有効性を示すものであった.
著者
上原 雄貴 水谷 正慶 武田 圭史 村井 純
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.53, no.2, pp.461-473, 2012-02-15

近年,インターネットを介した各種サービスにおいて,ユーザごとの行動履歴や趣味趣向に応じた最適化されたサービスを適時に提供することで,新たな付加価値を生み出すための取組みが行われている.実際にこのようなサービスを利用するためには利用者が専用のアカウントを登録するといった特別な操作が必要である.また,従来ホストの識別にIPアドレスやMACアドレスが利用されているが,IPアドレスはネットワーク環境によって変化し,MACアドレスは詐称可能であるため,継続的にホストや所有者を特定できない.そこで本研究では,特定のユーザが利用するデバイスごとに,ユーザの利用形態によって特徴的なトラフィックパターンが現れるかを事前に調査した.そして,その結果を用いてネットワーク上に発信されているパケットのヘッダ情報を収集,解析することでホストおよびユーザを特定する手法を提案した.本提案手法において,ユーザが発信するパケットのペイロード情報はプライバシ侵害の懸念があるため,パケットヘッダ情報のみを収集することでホストおよびユーザを特定することを目的とする.そして,200人ほどが参加するカンファレンスや学術ネットワークにおいてユーザの許諾を得たうえで実験を行い,ホストやユーザを本手法によって特定可能であることを示した.これよって,サービス提供者はユーザに特別な操作や設定などを求めることやデバイスの制約などを受けることなく,ユーザごとに特化したサービスを提供できる可能性を示した.As demand for internet services specifically customized for each user increases, service providers make effort to build extra value on their services by providing useful services, based on personal action history and personal interest. However, in order to use these services, they require users to install specific application. IP addresses and MAC addresses are being used for host identification, but IP addresses vary as the hosts' network environment change, and MAC addresses are deceivable. Therefore, continually specifying hosts and users is impossible. In this paper, we propose a method to identify and track users by collecting and analyzing network traffic, which enables users to receive customized services without installing special application nor user of specific devices. Payloads of packets, transmitted by users, are subjected to privacy, so in the method, host and user identification is performed by collecting information from packet header. This methods' practicability has been verified through experiments, performed on a conference and an academic network. Through the experiment, possibility for service providers to offer users user specific services, without requiring users to perform particular actions nor setting, nor limiting users to use specific devices, has been shown.
著者
藤井 叙人 片寄 晴弘
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.50, no.12, pp.2796-2806, 2009-12-15

市販テレビゲームにおいて,ゲーム内のコンピュータ(COM)の戦略に対してプレイヤの意識が高まりつつある.特に,世界的に人気のある遊☆戯☆王やポケットモンスターに代表されるビデオトレーディングカードゲーム(ビデオTCG)においては,プレイヤの要求に合わせたCOMの強さの設定が必要不可欠である.現在ではゲームプログラマによる戦略の作り込みによって実現されているが,これは非常に煩雑で時間がかかる.本研究では,強化学習法を用いて,戦略型ビデオTCGの戦略を自動学習する戦略学習機構について検討する.COMの最適行動学習だけでなく,TCG特有の要素である"最適なカード組合せ" や"魔法や罠などの特殊効果" に関しても学習機構を実装する.戦略学習機構の評価として,ルールベース戦略を相手とした計算機実験を実施する.最後に,戦略学習機構の汎用性と,残された課題,その解決策について検討する.Behavior and strategy of computers (COM) have recently attracted considerable attention with regards to video games, with the development of hardware and the spread of entertainment on the Internet. Previous studies have reported strategy-acquisition schemes for board games and fighting games. However, there have been few studies dealing with the scheme applicable for video Trading Card Games (video TCG). We present an automatic strategy-acquisition system for video TCGs. The proposed strategy-acquisition system uses a sampling technique, Action predictor, and State value function for obtaining rational strategy from many unobservable variables in a large state space. Computer simulations, where our agent played against a Rule-based agent, showed that a COM with the proposed strategy-acquisition system becomes stronger and more adaptable against an opponent's strategy.
著者
星 貴之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.57, no.12, pp.2589-2598, 2016-12-15

音響浮揚は強力な超音波を発生させる装置が必要であることから,これまで研究所など限られた場所でのみ行われていた.本研究では,一般人にも購入可能な材料を用いた音響浮揚装置の実現を目指す.前報において,市販の超音波実験キットの駆動回路をそのまま使用し,超音波振動子を球面に配列することによって,ポリスチレン粒子を浮揚できることを示した.本報では,3Dプリンタを用いて作製した安定な球面アレイと,それを用いて実現された浮揚現象とのインタラクションについて報告する.
著者
松村真宏 三浦麻子 柴内康文 大澤幸生 石塚満
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.1053-1061, 2004-03-15
参考文献数
20
被引用文献数
19

「2ちゃんねる」は日本最大のオンラインコミュニティサイトである.ところが,そこに書き込まれる情報はときとして「便所の落書き」と揶揄されるように,一見すると意味のない言葉や記号にしか見えないものも多い.これは非常に奇妙な現象である.というのも,便所の落書きを見るために毎日数十万人もの人が訪れるとはとても考えられないからである.ではなぜ2ちゃんねるはあれほど盛り上がっているのだろうか.実は傍から見れば意味がないように思える言葉や記号のやりとりが2ちゃんねるのユーザには意味があり,これが2ちゃんねるが盛り上がる要因となっているのかもしれない.このような動機から本稿では,2ちゃんねるにおけるコミュニケーションの特徴に着目して,2ちゃんねるが盛り上がるダイナミズムを解き明かすことを目指す.特に,コミュニケーションの特徴として,メッセージのサイズや投稿数,返信率,投稿される早さなどの基本的な属性に加え,2ちゃんねるに特徴的な名無しと,2ちゃんねる語やアスキーアート(AA)などの定型的な表現技法に注目する.共分散構造分析により構築した「2ちゃんねるモデル」は,定型的表現傾向が議論発散傾向と議論深化傾向に及ぼす関係などを明らかにしている.2channel' is the most popular online-community site in Japan,where millions of participants are chitchatting or discussing various topics.However, this fact sometimes confuses us because most of messages in 2channelseem to be meaningless, often said as graffiti. To understand the mystery of 2channel, we assume the existence of something at the back of 2channel that governs the activity of participants.Looking at 2channel from this point of view, there could be many factors that affect online communication. For example, terms that seem to be meaningless for usmight have some meanings for participants in 2channel,and communication with the terms might activate interaction.In this paper, we aim at analyzing the dynamism of 2channel by applying Structural Equation Modeling (SEM) to eight observable characteristics of communicationincluding basic properties (message size, posting activity, reply rate, etc), anonymity, and specific expressions (jargons and ASCII arts peculiar to 2channel).The structural equation model of 2channel clearly shows various causalities among the characteristics,i.e. the use of specific expressions affects positively to chitchat-type communication, and negatively to discussion-type communication.
著者
伊藤 毅志 松原 仁 ライエル グリンベルゲン
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.45, no.5, pp.1481-1492, 2004-05-15

人間の問題解決の認知過程については数多くの研究が行われてきた.ゲームやゲーム理論は昔から人間の問題解決行動の研究において重要な役割を果たしてきた.なかでもチェスを題材にした認知科学的研究では,エキスパートのプレーヤは,記憶課題において非常に卓越した認識能力を示した.Simon とChase は,このエキスパートの優れた記憶能力をチャンクという概念を用いて説明した.本論文では,将棋を題材に次の一手問題を様々な棋力の被験者に提示して,指し手を決定するまでの思考過程を発話プロトコルとアイカメラデータとして記録する実験を行った.その結果,将棋の上級者以上のプレーヤでは,単に局面に対する駒の配置に関する知識が形成されるだけでなく,局面をその前後関係からとらえられる知識が獲得されることが分かってきた.また,従来の研究から,チェスの上級者では,必ずしも強くなるにつれて量において多く先読みをしないことが知られていたが,将棋では上級者になるにつれ,深く大量に先読みすることが分かった.これらの結果は,従来のチェスの研究で見られたような「空間的チャンク」だけでなく,時間的な前後関係を含んだ「時間的チャンク」の存在の可能性を示唆している.
著者
栗田 多喜夫 加藤俊一 福田 郁美 坂倉 あゆみ
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.33, no.11, pp.1373-1383, 1992-11-15
参考文献数
28
被引用文献数
180

利用者の主観を反映させた印象語からの絵画データベースの検索法を提案する。「ロマンチックで暖かい」というような視覚的印象は 利用者の好み 文化的背景などの違いにより個人ごとに異なっていると考えられるので そうした要求からの検索を実現するためにはシステムはその利用者にとって「ロマンチックで暖かい」とはどういうことなのか評価できなければならない.このとき データベースに蓄えられるすべての絵画に対して 利用者ごとの主観的属性をあらかじめ登録することは困難である.本積では 各利用者に学習用の絵画に対して印象語を付けてもらい その結果から正準相関分析により印象語と画像特徴との相関関係を学習し それを検索に利用する方法について述べる.各利用者の印象語と画像特徴との主観的態対応関係を学習しておくと 印象からの検索はもちろん 類似画検索や未知の絵画に対して印象語を推定することなども可能となる.印象派の絵画を対象とした画像データベースに対して 提案した手法による検索実験を行い良好な結果が得られた.