- 著者
-
土屋 信行
- 出版者
- 水利科学研究所
- 雑誌
- 水利科学 (ISSN:00394858)
- 巻号頁・発行日
- no.330, pp.57-72, 2013-04
治水対策は国が国民に対して備えなければならない必須の最重要施策である。これは国の責任において国民の命と資産を守る安全保障と捉えるべきである。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次報告によれば,気候システムの温暖化には疑う余地がなく,大気や海洋の全球平均温度の上昇,雪氷の広範囲にわたる融解,世界平均海面水位の上昇が観測されていることから今や明白である。このことにより干ばつ,熱波,洪水など極端な気象現象のリスクの増加,水災害の危険性も増大している。台風の大型化,降雨強度の増大などによりこれまで100~200年確率を目指してきた河川でも実際には既に,治水安全度は著しく減じていると言える。さらに,地球温暖化というさらなるリスクの増大を捉えたとき,これまでの計画高水流量という指標に対し行ってきた水災害対策を,超過洪水をも視野に入れて検討する事が求められている。このような状況から超過洪水はもはや起こることが確実であり,これに備えることは予断を許さないところまで来ていると考える。首都圏のように中枢機能が集積している地域では,国家機能の麻療を回避するため,被害の最小化を目指すことが必要である。