- 著者
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川名 淳子
- 出版者
- 日本文学協会
- 雑誌
- 日本文学 (ISSN:03869903)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, no.11, pp.36-47, 1987-11-10
『紫式部日記』における行事記録的部分には、紫式部が実際にいた地点から見えた範囲を、対象により近接融合した形で語る視座と、自己の存在もその状況の一要素として客観視し、土御門邸全体を俯瞰するような形で伺候する人々や調度の配置等を述べる視座の二つが認められる。が、後者はいわば観念上のもので実体験に基づくものではない。本稿ではその俯瞰的視座の背景に、行事絵の享受によってもたらされた紫式部の視覚的な場面構成意識というものを想定し、この作品の構造と文体の特異性に迫る一考察を試みた。