著者
村田 義一 高橋 儀昭 洞平 勝男
出版者
北海道立林業試験場
雑誌
北海道林業試験場研究報告 (ISSN:09103945)
巻号頁・発行日
no.38, pp.1-22, 2001-03

北海道東北部の西興部村のトドマツ天然林で1987年から2000年にかけてマツタケの発生現況を調査したところ,試験地には123個/haに及ぶ多くのマツタケのシロが分布するが,シロ当たりのマツタケ発生本数は少なく,年平均1.5本にすぐないことがわかった。シロ当たりの発生本数が少ない原因として,シロの成長がよくない(8.3~11.6cm/年にすぎない)ことや,シロの活力の低下,老齢化があげられる。比較的齢の若いシロでも,部分的に菌糸層の成長が抑制され,それがマツタケの発生量を低下させているように思われた。 本林分のマツタケの発生促進を図るため,シロの活性化と更新を目的に,総合処理区では,1993年に,混みすぎた立木,特に広葉樹の除間伐,腐植層の除去,害菌のシロの除去と心土による埋め戻し,立木の地際に生じた段階状の段差解消のための客土などを行った。除間伐区では,除間伐以外の施業は行わなかった。これらの施業の効果は次のとおりであった。 1 シロ当たりおよびha当たりのマツタケ発生量が増加した。総合処理区では施業の効果が特に顕著で,年平均で,シロ当たり発生本数は3.5本に増加し,ha当たり発生量は約51kgに達した。 2 総合処理区と除間伐では,マツタケの発生するシロの数が無処理区より増加した。この効果は施業後ほぼ3年以内に現れた。 3 総合処理区では,茎が太く,大きいマツタケが発生するようになった。 4 総合処理区と除間伐区では,マツタケの集中発生時期が早期化あるいは長期化した。 5 活力の著しく低下したシロを除き,害菌のシロの除去や段差解消のための客土によって,その部分の菌糸層の成長抑制が解消した。 6 総合処理区で,施業後に新たに形成されたと考えられるシロが確認された。 以上の結果から,本稿で実施した施業は,マツタケ未発生のシロでマツタケの発生を促進する効果があり,既発生のシロでは,活力の著しく低下したシロを除いて,菌糸層の部分的な成長抑制の解消とマツタケ発生量の増加のために有効であることがわかった。老齢で活力が著しく低下したシロの場合,本稿の施業ではその活力を回復させることはできなかったが,それらのシロは,活力の高いシロによって更新が可能と思われた。

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