著者
飯田 修一 春原 嘉弘 前田 英郎
出版者
農業技術研究機構近畿中国四国農業研究センター
雑誌
近畿中国四国農業研究センター研究報告 (ISSN:13471244)
巻号頁・発行日
no.3, pp.57-74, 2004-03
被引用文献数
5

「LGCソフト」は農業生物資源研究所放射線育種場で1992年に低アミロース良食味の低グルテリン米品種の育成を目的に,「ニホンマサリ」の低アミロース突然変異系統の「NM391」を母とし,低グルテリン米系統「LGC1」を父として人工交配を行いF1を養成し,F2から,近畿中国四国農業研究センター(旧中国農業試験場)において育成された品種である。2000年から「中国173号」の系統名で奨励品種決定調査等の試験を行ってきた結果,2002年9月3日に「水稲農林381号」に登録され,「LGCソフト」と命名された。「LGCソフト」は低グルテリン,低アミロース,良食味という新しい特性を持った新品種であり,タンパク質摂取制限が必要な腎臓病患者等の病態食等の利用が期待される。「LGCソフト」の特性の概要は以下の通りである。1 出穂期及び成熟期は「エルジーシー1」,「ニホンマサリ」とほぼ同じで「コシヒカリ」より4日程度遅く,育成地では早生の晩に属する粳種である。2 稈長は「エルジーシー1」,「ニホンマサリ」より8cm程度短い短稈で,穂長は「ニホンマサリ」並かやや短く,穂数は「エルジーシー1」,「ニホンマサリ」と同程度である。草型は偏穂数型である。3 収量性は「エルジーシー1」,「ニホンマサリ」よりやや劣る。4 耐倒伏性は,「エルジーシー1」,「ニホンマサリ」と同じやや強である。5 品質は,低アミロースのため糯種に近い白濁があるが,この点を除けば「エルジーシー1」,「ニホンマサリ」並の中である。6 食味は水加減を15%程度減じた場合,「エルジーシー1」,「日本晴」より明らかに良好である。また,「エルジーシー1」に「LGCソフト」を33~40%程度混米をした条件でも「日本晴」より食味が良好となる。7 白米中の易消化性タンパク質のグルテリン含量が低く,難消化性タンパク質のプロラミンが多い。8 米の用途としては慢性腎不全患者の病態食としての利用が考えられる。9 いもち病抵抗性遺伝子はPiaを持つと推定され,葉いもち圃場抵抗性,穂いもち圃場抵抗性はともに中である。10 白葉枯病抵抗性は中,縞葉枯病抵抗性に対しては罹病性で,穂発芽性はやや難である。「LGCソフト」は,中国,四国,近畿,東海から関東に至る地域の平坦地帯から中山間地帯に適すると考えられる。低タンパク質にするため多肥栽培はしない。登熟気温が低いとアミロース含量が増加する。栽培にあたっては,直播栽培,多肥栽培を避け,異品種の混入を注意する。また,腎臓病等への病態食として用いる場合には専門医,栄養士の指導を受ける。

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