著者
野上 ふさ子
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.159-164, 2008-01

日本では戦後に急速に集約的工業畜産が導入された。集約畜産の実態は、一般の国民がそれを知る機会がほとんどないままに、急速に拡大してきたために、畜産の現状と一般の国民の意識の乖離が甚だしい状態になっている。それに加えて、80年代からは畜産製品の輸入が急増しているため、ますます畜産の現場は一般の消費者の意識からほど遠いものとなっている。近年、海外では、世界に広がる家畜伝染病の脅威に対抗するためには家畜の健康と福祉の促進が必要だという認識が広がり、OIE(国際獣疫事務局、世界動物保健機関)が主導して家畜福祉への取り組みが開始されてきた。OIEは世界169カ国の政府行政機関が加盟する国際機関であり、他の国際機関と同様に、NGO(非政府団体)のオブザーバー参加を促している。また、EU(ヨーロッパ連合)では、有機畜産・環境保全型農業の政策の一つとして、家畜福祉を導入しており、ここでも動物福祉団体が積極的に政策に関与している。

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