- 著者
-
加藤 修
- 出版者
- 養賢堂
- 雑誌
- 農業および園芸 (ISSN:03695247)
- 巻号頁・発行日
- vol.83, no.11, pp.1189-1197, 2008-11
短果枝を主体とした栽培の是非。側枝更新の功罪。今日、千葉県では、'幸水'は最も心血が注がれて栽培が行われている品種と切言できる。生産農家はすべてこの品種を中心に生産体制を整え、すべて最優先で管理を遂行している。せん定では花芽を樹冠内にまんべんなく配置するために側枝更新を頻繁に行ない、同時に翌年度に備えて新たな予備枝の設置に余念がない。大果生産が強く求められているので、開花前には花芽摘除(休眠期に開花数の制限を目的として花芽を基部を残して手でかいて除去する方法、一方で、短果枝群の短果枝などに対してせん定鋏を用いて基部ごと除去するのを花芽整理と呼び、両者を区別した)や摘らいが行われている。開花後は摘果を真っ先に行って果実肥大を促すとともに樹勢の低下を防ぐ管理がなされている。同時に、予備枝育成にも力を入れる。さらに、黒星病などの病害虫の発生に常に気を使う。裏を返せば、'幸水'はこうした生産農家の努力により生産が支えられている。見方を変えれば、果実が小さく収量が低いわりには栽培管理に最も注意が払われ、かつ多くの人員と労働力が投下されていると言える。