著者
高橋 肇
出版者
養賢堂
雑誌
農業および園芸 (ISSN:03695247)
巻号頁・発行日
vol.84, no.2, pp.247-255, 2009-02

パンの原料は、小麦である。小麦を栽培したことのある人は、少ないながらもいるであろうが、さらにそのなかで「自分で栽培した小麦を使ってパンを焼いた」という人はどれくらいいるだろうか?今、都会に暮らしていても、農家の出身であるという人はたくさんいる。農家でなくとも、「田舎のおじいちゃんが作ったお米を食べている」という人も大勢いるはずである。しかしながら、「田舎のおじいちゃんが作った小麦粉でパンを焼いている」という人はいるだろうか?地産地消のパンは、おいしいことも大切であるが、「安全で安心できること」も求められる。安全で安心できることは、ふつうのパンでも小麦の栽培や貯蔵、小麦粉の製粉工程、製パン工程において、それぞれの製造・管理のなかですでに実現されてきたことではあるが、「地産地消」であるからには、「有機」や「減農薬」、「顔の見える製品」であることまでもが求められるであろう。さらに、地産地消のパンは、その土地で生産されたものをその土地で消費するというこだわりから生まれるストーリーのなかに「おもしろく楽しいこと」が求められる。本稿では、地産地消のパンづくりをめざす前提として、まず、「味覚としてのおいしさ」とは何かを、小麦栽培からパンづくりまでの工程別に検証する。次に、これに対して「安全で安心できるおいしさ」を加えていくうえでの問題点を考察する。最後に、地産地消のパンづくりに「おもしろく楽しいおいしさ」を加えるための方策を「難しいからこそおもしろい」という観点で考えてみたい。

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