著者
富濱 毅
出版者
鹿児島県農業開発総合センター
雑誌
鹿児島県農業開発総合センター研究報告 耕種部門 (ISSN:18818609)
巻号頁・発行日
no.3, pp.225-282, 2009-03

本研究の目的は、赤焼病細菌の諸性質、発生生態および発生に影響する気象や栽培条件を明らかにし、総合的な赤焼病の防除対策を構築することである。要約は以下のとおりである。(1)2004〜2005年に赤焼病自然発生茶園から分離した赤焼病細菌の硫酸銅に対する感受性は、1993年に分離した標準細菌株と同じで、銅耐性菌の存在は確認されなかった。(2)赤焼病細菌の硫酸銅に対する感受性は、培地の種類で大きく異なり、培地中のアミノ酸によって銅剤感受性が低下した。チャ葉の有傷部位では無傷部位に比べて赤焼病細菌に対する銅剤の効果が低下したが、この要因としてアミノ酸が関与する可能性は低かった。(3)赤焼病細菌は、培養中に不透明で粘性のあるコロニーを形成する野生株から、透明型のコロニー(T型変異)、高粘性型のコロニー(HV型変異)および皺小型(WS型変異)のコロニーを形成する株に変異した。これらの細菌株をその後の試験に用いた。(4)赤焼病細菌は、培地の寒天濃度によってSwim型とSwarm型の運動性を示し、ウェルの壁面にバイオフィルムを形成した。また、赤焼病細菌を茎内に接種すると、発病適温域で病原細菌は導管内を移動する可能性が示唆された。(5)赤焼病細菌の菌体外多糖質(EPS)産生はバイオフィルム形成に大きく影響し、赤焼病細菌の鞭毛はSwim型の運動性およびバイオフィルム形成に大きく関与した。Swarm型の運動性には、鞭毛およびEPS以外の要因が関与し、Swarm型の運動性と茎内移動との間には高い相関が見られた。バイオフィルムの形成により赤焼病細菌は抗生物質のカスガマイシンに対して著しく感受性が低くなったが、バイオフィルムの形成程度と感受性との間に相関は見られなかった。

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