著者
加治 俊幸 長友 誠
出版者
鹿児島県農業開発総合センター
雑誌
鹿児島県農業開発総合センター研究報告 耕種部門 (ISSN:18818609)
巻号頁・発行日
no.2, pp.43-51, 2008-03

サトウキビ'NiF8'における施肥窒素の利用率を重窒素トレーサー法(以下、(15)Nトレーサー法)で明らかにした。当年に施肥した窒素の利用率は、春植え栽培で46%、株出し栽培で51%であった。施肥期別にみると、春植え栽培では、基肥窒素26%、追肥窒素64%で、基肥窒素の利用率は、追肥窒素の0.4倍であった。株出し栽培では、基肥窒素65%、追肥窒素45%で、逆に基肥窒素の利用率が追肥窒素の1.4倍で、作型によって大きく異なった。春植え栽培では、生育量確保のために追肥は梅雨明け後に施用される場合が多く、溶脱の機会が少ないこと、株出し栽培では、基肥は、生育初期から吸収され、サトウキビ体内に取り込まれ、溶脱しにくいことが大きな要因と考えられた。
著者
林川 修二 嶽崎 研 福田 健
出版者
鹿児島県農業開発総合センター
巻号頁・発行日
no.7, pp.39-46, 2013 (Released:2014-01-23)

サツマイモは鹿児島県の主要作物である。可販部位である塊根を直接加害する害虫の中でコガネムシ類は広域的かつ恒常的に発生するため,その防除は商品性を維持する上で重要である。コガネムシ類防除では幼虫対象の薬剤防除が行われているが,効果が不安定な事例がある。この要因の一つとして,薬剤と幼虫の分布が異なることが影響していると考えられた。塊根の被害は年次間差があるが,アオドウガネ2齢幼虫の割合が高まる8月下旬~9月下旬以降に進展した。アオドウガネ卵を接種し経時的に掘り取った結果,畦間に接種した場合,1齢幼虫が畦内に侵入し,齢期が進んでも分布は畦の中下層に多いことが明らかとなった。薬剤を畦立時に処理する場合,コガネムシ類の分布が多い中下層まで均一に薬剤が混和されることが,防除効果を安定させる上で重要であると考えられた。
著者
富濱 毅
出版者
鹿児島県農業開発総合センター
雑誌
鹿児島県農業開発総合センター研究報告 耕種部門 (ISSN:18818609)
巻号頁・発行日
no.3, pp.225-282, 2009-03

本研究の目的は、赤焼病細菌の諸性質、発生生態および発生に影響する気象や栽培条件を明らかにし、総合的な赤焼病の防除対策を構築することである。要約は以下のとおりである。(1)2004〜2005年に赤焼病自然発生茶園から分離した赤焼病細菌の硫酸銅に対する感受性は、1993年に分離した標準細菌株と同じで、銅耐性菌の存在は確認されなかった。(2)赤焼病細菌の硫酸銅に対する感受性は、培地の種類で大きく異なり、培地中のアミノ酸によって銅剤感受性が低下した。チャ葉の有傷部位では無傷部位に比べて赤焼病細菌に対する銅剤の効果が低下したが、この要因としてアミノ酸が関与する可能性は低かった。(3)赤焼病細菌は、培養中に不透明で粘性のあるコロニーを形成する野生株から、透明型のコロニー(T型変異)、高粘性型のコロニー(HV型変異)および皺小型(WS型変異)のコロニーを形成する株に変異した。これらの細菌株をその後の試験に用いた。(4)赤焼病細菌は、培地の寒天濃度によってSwim型とSwarm型の運動性を示し、ウェルの壁面にバイオフィルムを形成した。また、赤焼病細菌を茎内に接種すると、発病適温域で病原細菌は導管内を移動する可能性が示唆された。(5)赤焼病細菌の菌体外多糖質(EPS)産生はバイオフィルム形成に大きく影響し、赤焼病細菌の鞭毛はSwim型の運動性およびバイオフィルム形成に大きく関与した。Swarm型の運動性には、鞭毛およびEPS以外の要因が関与し、Swarm型の運動性と茎内移動との間には高い相関が見られた。バイオフィルムの形成により赤焼病細菌は抗生物質のカスガマイシンに対して著しく感受性が低くなったが、バイオフィルムの形成程度と感受性との間に相関は見られなかった。
著者
小山田 耕作 永田 茂穂 鮫島 國親
出版者
鹿児島県農業開発総合センター
雑誌
鹿児島県農業開発総合センター研究報告 耕種部門 (ISSN:18818609)
巻号頁・発行日
no.3, pp.33-46, 2009-03

イチゴ'さつまおとめ'の低温暗黒処理育苗による早進化技術について3回の定植時期で検討した。9月12日定植では7月23日に置肥を除去する窒素施肥制限を行い、8月22日に低温暗黒処理を13℃一定で18日間処理、または前半9日間10〜13℃、後半9日間15℃の変温管理することで安定した花芽分化が認められた。また、9月12日に定植することで開花期が10月中旬に早まり、11月中旬から収穫可能となった。9月16日定植では8月1〜5日に窒素施肥制限を行い、8月31日〜9月2日に低温暗黒処理を13℃一定で13〜15日間処理することで安定した花芽分化が認められた。また、9月16日に定植することで開花期が10月下旬に早まり、11月下旬から収穫可能となった。9月22日定植では8月5〜10日に窒素施肥制限を行い、9月7〜9日に低温暗黒処理を13℃一定で10〜13日間処理することで安定した花芽分化が認められた。また、9月22日に定植することで開花期が11月上旬に早まり、12月上中旬から収穫可能となった。これらの低温暗黒処理育苗を行い定植時期を早めることで、普通ポット育苗に比べて年内収量が増加した。