- 著者
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斉藤 聡
- 出版者
- 養賢堂
- 雑誌
- 畜産の研究 (ISSN:00093874)
- 巻号頁・発行日
- vol.64, no.1, pp.115-122, 2010-01
ベトナムでの国際協力の現状と今後の展開。ベトナムと聞いて多くの日本人が思い浮かべるイメージはベトナム戦争ではないだろうか。米軍を相手にゲリラ戦を戦ったベトナム軍は、アメリカの支援を受けた当時の南ベトナム・サイゴン政府を壊滅に追い込み、サイゴン(現ホーチミン市)を陥落したのが1975年4月30日、現在もこの日は南部開放記念日として国民の祝日となっている。ベトナムは、中国、フランスによる植民地支配が続いた後、フランスやアメリカ、カンボジア、中国と次々と戦争が続き、侵略と抵抗の歴史を繰り返してきた。そのため、経済的に低迷する時代を長きに渡り経験してきた。1976年の南北統一によるベトナム社会主義共和国建国後、政治的安定を取り戻したベトナムは、「ドイモイ」と呼ばれる改革路線を打ち出し、市場経済の導入と対外開放政策による工業化による経済発展が著しく、7〜8%台の経済成長を続け、近年、日本や近隣諸国との経済・貿易面の交流も盛んになっている。日本政府はODAによる技術協力支援のひとつとして独立行政法人国際協力機構(以下、JICA)による「ベトナム中小規模酪農生産技術改善計画」を2006年より開始した。筆者は2009年よりJICA技術協力専門家としてベトナムに派遣されており、今回、同計画の活動を中心に、ベトナムの酪農開発について紹介したい。