- 著者
-
伊藤 晶文
木塲 幸乃
- 出版者
- 鹿児島大学
- 雑誌
- 鹿児島大学教育学部研究紀要 自然科学篇 (ISSN:03896692)
- 巻号頁・発行日
- vol.62, pp.1-8, 2010
鹿児島県本土で執筆された二つの古日記の天気記録を用いて,1830年代から1850年代の夏および冬の寒暖,台風の襲来,および異常天候について検討した。7月の晴天率および冬(12~2月)の降雪率の比較から,現代と比べて当時の夏は大きく変わらないものの,冬は雪が多く寒さが厳しかったと考えられた。対象期間のうち,1837年,1841年,1853年,1855年,1856年,および1859年の夏は暑く,1833年,1840年,1844年,1848年,および1854年の夏は冷涼であり,1840/41年,1851/52年,および1854/55年の冬は多雪で寒さが厳しく,1844/45年および1853/54年の冬は寡雪で温暖であったと推定された。1840年代以降における太平洋側の降水率の増加と,1850年代以降における暑夏の出現頻度の増加は,それぞれ小氷期の終了を示唆する。台風の襲来数が同時期の近畿・東海地方よりも少ないことから,当時の台風の進路は鹿児島県本土から離れていたとみられる。洪水と雨乞の記載日数の比較から,当時は干ばつよりも長雨や大雨などの異常天候が多かったと考えられた。