著者
森口 哲史 藤田 勉 市村 志朗
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要 自然科学篇 (ISSN:03896692)
巻号頁・発行日
vol.60, pp.19-28, 2008

フラダンスは,生涯スポーツとして中高年女性を中心に愛好家が増加している.しかしながら,その健康運動としての有効性を検証した研究は極めて少ない.本研究は中高年女性14名を対象にフラダンスを行った際の心拍変動,足圧重心動揺および気分プロフィールの変化について検討することを目的とした.その結果,フラダンス中の平均心拍数は60%HRmax程度であり,血中乳酸濃度の顕著な上昇はみられなかった.また,フラダンス直後の重心動揺総軌跡長は有意に短縮し(pく0.05),動揺面積も減少した. POMS検査では活気気分が有意に上昇し(pく0.01),すべての陰性気分が減少した.これらの結果より,フラダンス実践は,低強度の有酸素的運動としての効果が期待でき,運動刺激が一過的に重心動揺を制御する可能性が示唆された.また,陽性の感情変化は運動継続と精神的健康維持に寄与するものと推察された.本研究により,フラダンスは中高年者の健康運動活動として,心理生理的に有効性が高い可能性が示唆された.
著者
伊藤 晶文 Ito Akifumi
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要 自然科学篇 (ISSN:03896692)
巻号頁・発行日
vol.59, pp.1-8, 2007

鹿児島県志布志砂丘では,台風0416号,0418号,0514号接近時に後浜上限を超えて砂丘まで達した波(越波)による堆積物と地形変化が観察された。本研究では,地形測量,堆積物の観察および粒度分析を行い,2004年および2005年の越波堆積物の分布,粒度組成,単位面積当たりの体積を明らかにし,越波イベント発生時における砂丘の地形変化と各イベントの差異を考察した。さらに言皮浪および気象資料からイベント発生条件を検討した。イベントが発生すると言毎岸林の立地する区域において,越波堆積物の定着により砂丘表面の起伏が埋められて平滑化が進む。調査地(100㎡)におけるイベント当たりの越波堆積物の体積は約7-8㎥であった。台風接近時の最大有義波高が6m以上,かつ台風の経路が調査地の西側であることがイベント発生条件と考えられた。この条件を満たす台風は1980年以降8個あり,1993年から2005年までに7個の台風が来襲している。
著者
伊藤 晶文 木塲 幸乃
出版者
鹿児島大学
雑誌
鹿児島大学教育学部研究紀要 自然科学篇 (ISSN:03896692)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.1-8, 2010

鹿児島県本土で執筆された二つの古日記の天気記録を用いて,1830年代から1850年代の夏および冬の寒暖,台風の襲来,および異常天候について検討した。7月の晴天率および冬(12~2月)の降雪率の比較から,現代と比べて当時の夏は大きく変わらないものの,冬は雪が多く寒さが厳しかったと考えられた。対象期間のうち,1837年,1841年,1853年,1855年,1856年,および1859年の夏は暑く,1833年,1840年,1844年,1848年,および1854年の夏は冷涼であり,1840/41年,1851/52年,および1854/55年の冬は多雪で寒さが厳しく,1844/45年および1853/54年の冬は寡雪で温暖であったと推定された。1840年代以降における太平洋側の降水率の増加と,1850年代以降における暑夏の出現頻度の増加は,それぞれ小氷期の終了を示唆する。台風の襲来数が同時期の近畿・東海地方よりも少ないことから,当時の台風の進路は鹿児島県本土から離れていたとみられる。洪水と雨乞の記載日数の比較から,当時は干ばつよりも長雨や大雨などの異常天候が多かったと考えられた。