- 著者
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大城 渡
- 出版者
- 名桜大学総合研究所
- 雑誌
- 総合研究 (ISSN:18815243)
- 巻号頁・発行日
- no.18, pp.15-46, 2011-02
本稿は、住民生活に重大な影響をもたらし得るにもかかわらず、その根拠となる体系的法令を有さない不発弾処理行政の構造をできる限り明らかにし、その法的課題を検討する。わが国には、かつての戦争の影響により全国各地(特に沖縄)に多くの不発弾が埋没している。不発弾処理の実際は、自衛隊や自治体、交通機関等多くの公私諸機関の連携によってなされるが、必ずしも明確な法令上の根拠を有するものではなく、法的責任の所在を暖昧にする要綱・通達に依拠しているところもある。そのため、行政のあり方として問題点も少なくなく、例えば、そもそも何れの行政機関が不発弾処理につき第一次的法的責任を負うのか未だ明確には定められておらず、また、不発弾が爆発した際の被災者に対する実効的救済をどのように図るか等、法的には未整備な点も多く見受けられる。他方、不発弾爆発事故をめぐるこれまでの司法判決に見出せる論理に依拠すれば、国の責任で惹起された戦争行為によって不発弾がもたらされ、かつその不発弾を放置することによる事故の危険性や生じ得る被害を合理的に予想することができ、さらに不断の探査や処理等を真摯に行うことでそのような事故の発生を可能な限り回避できるため、国の法的責任は明確に認められうる。但し、それでもなお被災者には、その救済に裁判という多大な負担を求めるものとなってしまう。現代に引き継がれ残された「戦争の惨禍」たる不発弾の処理について、国は、戦後処理の一環として、あるいは憲法上の「平和主義」の趣旨に適うものとして、被災者を救済し、自らの法的責任を明らかにする体系的な法令を早急に整備し、住民の生命や生活の安全を確保すべき憲法上の責任を誠実に果たさなければならない。This article clarifies the process and related legal questions concerning the public administration of bomb disposal. In Japan (particularly in Okinawa), many unexploded bombs remain from the last war. The public administration for their disposal is a cross-agency process involving the Self-Defense Forces, the police and the local municipality. But because it is based mainly on executive rules rather than legislative laws, the legal liabilities are vague, and defects in the system lead to the absence of effective relief for casualties. Past judicial rulings following disastrous explosions clearly indicate the legal liability of the state. However, taking cases to court for relief will certainly impose heavy burdens on the casualties. They need recourse to systematic law. In the spirit of constitutional pacifism, the central government must take full constitutional responsibility for the disposal of unexploded bombs both at home and abroad.