- 著者
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前泊 清美
- 出版者
- 沖縄大学地域研究所
- 雑誌
- 地域研究 (ISSN:18812082)
- 巻号頁・発行日
- no.9, pp.1-12, 2012-03
本稿は、鳩山政権時の2009年9月から2010年6月のワシントンポストとニューヨークタイムスにおける在沖海兵隊普天間航空基地移設問題報道に関する66記事を分析し、両紙のメディア・フレームの酷似性を確認した。特に、日米同盟重視を強調するフレームの酷似性が高かった。記事の分析には、政治コミュニケーション研究者ロバート・M・エントマンのフレーミング理論を援用した。フレームの機能には、(1)結果や状況を問題点として定義する。(2)問題の原因を診断する。(3)それについての道徳的判断を示す。(4)問題の解決法、あるいは状況の改善法を推奨する(筆者訳)の4つがあり、両紙の記事はフレームが果たす機能すべてを満たしていることが確認された。多くの記事において、鳩山首相が中心的なアクターに据えられており、鳩山首相の政治的に「実現不可能な」公約、つまり普天間基地の沖縄県外および日本国外への移設が、ここでは長年の日米同盟を揺るがす上記(1)にあたる「問題」としてフレーミングされている。上記(2)問題の原因は、「経験のない、未熟な」鳩山新政権の発足であろう。鳩山政権は、2006年に日米で「合意」決定された普天間飛行場の辺野古移設を「破棄する」意思を米政府に伝え、米国政府、メディアの強い反発に遭う。米主要メディアは、こぞって、上記の(3)にあたる「道徳的な判断」を打ち出した。それは、沖縄の人々の負担を軽減するために、普天間基地は「できるだけ早く、人口がより少ない場所へ移設するべきだ」という判断である。This paper examines 66 articles on the Futenma issue that appeared in two major U.S. newspapers, The Washington Post and The New York Times, in 2009-10 and finds the media frames of both papers to be nearly identical, especially in highlighting the importance of the Japan-U.S. security alliance. Robert M. Entman's theory of framing in political communication is employed in analysis of the articles concerning Prime Minister Yukio Hatoyama's handling of the relocation of the Futenma U.S. air base. The newspaper articles successfully implemented all four functions of news framing and may have had influence on the resignation of Japan's Prime Minister in mid-2010.