出版者
宮城県古川農業試験場
雑誌
宮城県古川農業試験場研究報告 = Bulletin of the Miyagi Prefectural Furukawa Agricultural Experiment Station (ISSN:09172904)
巻号頁・発行日
no.4, pp.79-128, 2005-02

1980年冷害で主要品種に発生した障害不稔の被害程度は戦前の品種より大きく、また、北陸地方で耐冷性とは無関係に育成されたコシヒカリやトドロキワセなどの被害程度が東北地方の品種より小さかった。そこで、新たに開発した耐冷性の高精度検定法「恒温深水法」を用いて、東北地方を中心とする日本の水稲品種延べ800種類余の耐冷性を検定した結果、コシヒカリとトドロキワセの耐冷性は最強級で、また、水稲の耐冷性品種の多くは両品種の近縁品種であった。そして、日本の水稲耐冷性品種の大半は明治時代の大品種「愛国」と「神力」を遺伝子源とする二大系譜に属し、収量性や品質のすぐれた優良品種であることを解明した。なかでも「愛国」系譜の中で「コシヒカリ」を生み出した良質・良食味品種の系譜は、最強級の耐冷性品種の系譜であった。従来、耐冷性と良質・良食味を両立させるイネ育種は困難と考えられてきたが、以上の結果から決して困難ではないと考えられた。そこでコシヒカリの耐冷性を利用して東北地方向きの耐冷・良質・良食味品種の育種に取り組み、最強級の耐冷性と最高の良質・良食味を両立させた「ひとめぼれ」の育種に成功した。「ひとめぼれ」は東北地方を中心に広く普及し、頻発する冷害の被害軽減と産米の品質・食味の安定向上に貢献している。以上の研究成果は東北地方におけるイネの耐冷性育種に新たな展望を開いた。

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