著者
北村 晃寿
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

1771年八重山地震に伴う八重山津波は,石垣島を中心に先島諸島全域にわたり,1万2千人の犠牲者と甚大なる被害を与えた.その最大遡上高は30mと推定され,2011年の東北地方太平洋沖地震の津波の発生まで,日本の歴史上,最大の津波とされていた.この八重山津波とそれ以前の大津波の痕跡として,「サンゴからなる津波石」や「遺跡を覆う石灰質の砂質津波堆積物」が報告されていた.最近,静岡大学防災総合センター客員教授の安藤雅孝氏が,石垣島の丘陵地で,人為改変から免れた砂質津波堆積物の“埋蔵地”を発見した.そこのトレンチ調査では, 4つの津波堆積物(上位から津波堆積物I,II,III,IV)が識別され,それらの年代は,西暦1950年を基準として,248年前以降,920–620年前,1670–1250年前,2700–2280 から1670–1250 年前である(Ando et al., 2018, Tectonophysics, 722, 265-276).I,II,IVは石灰質砂からなり,陸側末端まで追跡できたので,末端高度(それぞれ9 m,6 m,8 m)を確定できた.津波堆積物Iは1771年八重山津波の津波堆積物で,末端高度(9 m)は古文書と一致する.津波堆積物I直下の土壌層には,複数の地割れが発見され,八重山地震では激しい地震動のあったことが裏付けられた.津波堆積物I,II,IVは貝化石を産し,それらの種組成から津波発生時にサンゴ礁の礁嶺が存在していたことが分かった(Kitamura et al., submitted).津波堆積物IIIは埋没津波石で標高1 mに見られる.津波堆積物IVの年代値の確定が不十分などの問題があり,追加の調査が望まれる.

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