著者
松野 哲男 巽 好幸 島 伸和 鈴木 桂子 市原 寛 清杉 孝司 中岡 礼奈 清水 賢 佐野 守 井和丸 光 両角 春寿 杉岡 裕子 中東 和夫 山本 揚二朗 林 和輝 西村 公宏 古川 優和 堀内 美咲 仲田 大地 中村 崚登 廣瀬 時 瀬戸 康友 大重 厚博 滝沢 秀明 千葉 達朗 小平 秀一
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

We started integrated marine investigations of Kikai Caldera with T/S Fukae-maru of Kobe University on October, 2016. Aims of our investigations are to reveal the structure of the caldera, the existence of magma reservoir, and to understand the mechanism of catastrophic caldera-forming eruption at 7.3 ka and a potential for a future catastrophic eruption. We conducted multi-beam echo sounder mapping, multi-channel seismic reflection (MCS) surveys, remotely operated vehicle (ROV) observations, rock sampling by dredging and diving, geophysical sub-seafloor imaging with ocean bottom seismometers, electro-magnetometers (OBEMs), some of which equip absolute pressure gauge, ocean-bottom magnetometers, and surface geomagnetic surveys.The first finding of our investigations is lines of evidence for creation of a giant rhyolite lava dome (~32 km3) after the caldera collapse. This dome is still active as water column anomalies accompanied by bubbling from its surface are observed by the water column mapping. Chemical characteristics of dome-forming rhyolites akin to those of presently active small volcanic cones are different from those of supereruption. The voluminous post-caldera activity is thus not caused simply by squeezing the remnant of syn-caldera magma but may tap a magma system that has evolved both chemically and physically since the 7.3-ka supereruption.We have been conducting integrated analyses of our data set, and have planned the fourth research cruise with T/S Fukae-maru on March, 2018, consisting of MCS survey, ROV observation, OBEM with absolute pressure gauge observation, and bathymetric and surface geomagnetic survey. We will introduce results of the data analyses and the upcoming cruise in the presentation.
著者
杉田 精司 巽 瑛理 長谷川 直 鈴木 雄大 上吉原 弘明 本田 理恵 亀田 真吾 諸田 智克 本田 親寿 神山 徹 山田 学 早川 雅彦 横田 康弘 坂谷 尚哉 鈴木 秀彦 小川 和律 澤田 弘崇
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

リュウグウの近接観測の本番が目前に迫っている。これに備えて、我々は3つの重要な準備を進めている。1) 低アルベド小惑星の可視スペクトルの見直し。2)リュウグウの地上観測スペクトルの解析とメインベル小惑星との比較。3)可視分光カメラONC-Tのスペクトル校正観測。本講演では、これらについて簡潔に紹介する。 まず、メインベルトの低アルベド小惑星のスペクトル解析である。先駆的な小惑星のスペクトルのサーベイ観測であるECAS(Tedesco et al.,1982)の後、地上望遠鏡による多バンド分光のSDSS(Ivezic et al. 2001)、地上望遠鏡のよる連続スペクトルのデータベースであるSMASS2の整備(Bus and Binzel, 2002)、天文衛星WISE/NEOWISEによる多バンド分光のデータベース(Masiero et al. 2011)など多数の強力な小惑星のスペクトルのデータベースが整備されてきた。特に、SDSS やWISE/NEOWISEによって膨大な数がある小さな小惑星のスペクトルアルベドの分布が定量的に計測されたおかげで、RyuguやBennuが由来するメインベルト内帯の低アルベド族の分布については最近に大きな理解の進展があった。まず、以前にNysa族と言われていた族は、E型スペクトルのNysa族の中にF型(or Cb~B型)のPolana族とEulalia族が隠れていることが明らかになった。さらにPolana族とEulalia族は形成時期が古くて広範囲に破片を分布させており、ν6共鳴帯にも多くの1kmクラスの破片を供給していることが分かった。その一方で、より若いErigone, Klio, Clarrisaなどのぞくはずっと若いため、ν6共鳴帯への大きな破片の供給は限定的であることが分かってきた。この事実に基づいて、Bottke et al. (2015)はRyuguもBennuもPolana族由来であると推論している。 このようにSDSS やWISE/NEOWISEのデータは極めて強力であるが、0.7μmのバンドを持たないため、広義のC型小惑星のサブタイプの分類には適さない。その点、ECASは、小惑星スペクトル観測に特化しているだけあって0.7μmのバンドの捕捉は適切になされている。しかし、ECASではあまり多くのC型小惑星が観測されなかったという欠点がある。そのため、現時点ではSMASS2のデータが広義C型のスペクトル解析に適している。そこで、我々はSMASS2の中の広義のC型の主成分解析を行った。紙面の関係で詳細は割愛するが、その結果はCg, C, Cb, Bなど0.7μm吸収を持たないサブタイプからなる大クラスターと、Ch, Cghなど0.7μm吸収を持つサブタイプからなる大クラスターに2分され、両者の間にPC空間上の大きな分離が見られること、またこの分離域はPC空間上で一直線をなすことが分かった。この2大クラスターに分離する事実は、Vernazza et al. (2017)などが主張するBCGタイプがCgh, Chと本質的に異なる起源を持っていて水質変成すら受けていない極めて始源的な物質からなるとの仮説と調和的であり、大変興味深い。 これに引き続き、世界中の大望遠鏡が蓄積してきた23本のRyuguの可視スペクトルをコンパイルして、SMASS2と同じ土俵で主成分解析に掛けた。その結果は、Ryuguの全てのスペクトルがBCGクラスターに中に位置しており、その分布は2大クラスターの分離線に平行であった。これはRyuguが極めて始源的な物質であることの現れかもしれず、BCGクラスター仮説の検証に役立つ可能性を示唆する。 しかし、現実は単純ではない。Murchison隕石の加熱実験で得られたスペクトルもPC空間ではRyuguのスペクトルの分布と極めて近い直線的分布を示すのである。これは、Ryuguのスペクトル多様性がMurchison隕石様の物質の加熱脱水で説明できるとの指摘(Sugita et al. 2013)とも調和的である。この2つの結果は、Ryuguの化学進化履歴について真逆の解釈を与えるものであり、はやぶさ2の試料採取地の選択について大きな影響を与えることとなる。 この2つの解釈のどちらが正しいのか、あるいは別の解釈が正しいのかの見極めは、0.7μm吸収帯の発見とその産状記載に大きく依存する。もし、Murchison隕石様の含水鉱物に富む物質がRyuguの初期物質であって加熱脱水で吸収帯が消えただけの場合には、Ryugu全球が表面下(e.g., 天体衝突などで掘削された露頭)まで含んで完全に吸収帯を失ってしまうことは考えにくい。したがって、0.7μm吸収帯が全く観測されない場合には、VernazzaらのBCG仮説やFやB型の水質変成によってCh, Cghが生まれたと考えるBarucciらのグループの仮説(e.g., Fornasier et al. 2014)が有力となるかも知れない。しかし、0.7μm吸収が見つかって、熱変成を受けやすい地域ではその吸収が弱いことが判明すれば、スペクトル多様性は加熱脱水過程でできたとの考えが有力となろう。 最後に、はやぶさ2ONCチームは打ち上げ後も月、地球、火星、木星、土星、恒星など様々な天体の観測を通じて上記の観測目標を達成できるための校正観測を実施している。それらの解析からは、0.7μm帯および全般的なスペクトル形状の捕捉に十分な精度を達成できることを示唆する結果を得ており(Suzuki et al., 2018)、本観測での大きな成果を期待できる状況である。引用文献:Bottke et al. (2015) Icarus, 247 (2015) 191.Bus and Binzel (2002) Icarus, 158, 146.Fornasier et al. (2014) 233, 163.Ivezic et al. (2001) Astron. J.、 122, 2749.Masiero et al. (2011) Astrophys. J. 741, 68.Sugita et al. (2013) LPSC, XXXXIII, #2591.Suzuki et al. (2018) Icarus, 300, 341Tedesco et al. (1982) Astrophys. J. 87, 1585.Vernazza et al. (2017) Astron. J., 153,72
著者
伊藤 英之 辻 盛生 井村 隆介
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

霧島・えびの高原では2013年12月以降,火山性地震・微動の増加や地殻変動が認められている.2017年4月には熱異常域の拡大や噴気量の増大,5月8日には噴出物も確認されたことから,噴火警戒レベル2への引き上げが行われた.2017年7月~8月にかけては急激な傾斜変動が観測され,それに対応して噴気活動も活発化した. 2018年1月19日には,継続時間約1分の火山性微動が観測されるとともに,傾斜計データの変化,火山性地震の増加など活発な活動が現在も継続中である. これらの活動に付随して,えびの高原周辺では湧水等にも変化が認められている.2017年3月19日には硫黄山南西側で,3月21日には火口南側で,6月4日には韓国岳登山道脇で顕著な熱水活動が確認されている(気象庁噴火予知連資料,2017).これらのことは火山性流体がえびの高原浅部にまで流入していることを示唆しているものと考えられる. 我々はえびの高原の浅部地下水系の理解と火山防災への寄与を目的として,2017年6月3日よりEC,水温の連続モニタリング観測を行うとともに,複数箇所の湧水を採取し,水質分析を継続的に実施している. 連続観測している地点は3カ所で,1カ所は水温のみ(No.1),残り2カ所ではEC・水温(No.2,No.3)を測定している.いずれのサイトでもデータの変動幅が大きい.EC・水温ともに降雨との相関は認められ,降雨時にはEC・水温とも一時的に低下し,特にECは,わずかの降雨にも敏感に反応する.一方,火山活動との相関については不明瞭である.2017年9月25日以降,不動池南西にある湧水ポイント(No.3)が枯渇し,それ以降のデータが回収できなくなった. 湧水湧出地点8カ所のいずれのサンプルでも,時系列変化が認められ,特にデータロガーを設置した3地点における陽イオン・陰イオンの時系列変化は著しい.これらのサンプルでは2017年9月22日以降,Ca+,Na+やSO42-,Cl-など主要イオン濃度の上昇傾向が認められ,特にNo.1における主要イオン濃度の情報が著しい.現在,火山活動や気象条件との相関について検討を行っている.
著者
小山 真人 鵜川 元雄
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

1987(昭和62)年8月20日の早朝、富士山頂で震度3の地震が発生し、その後も同月27日まで震度1~2の地震が3回続いた。これらの地震は山頂だけが有感であり、八合目付近の山小屋でも気づいた人はいなかった。遠方の高感度地震計の記録が不明瞭だったことから、山頂直下のごく浅い部分で発生したと考えられている。この地震を契機として山頂に初めて地震計が設置されたが、今日まで同様な地震は観測されていない。日誌などを遡っても例がなく、1933年以降で初めての事件であった(中禮ほか1987火山学会予稿集;神定ほか1988験震時報;鵜川ほか1989防災センター研報)。この地震は同年8月26日の各社の報道で大きく取り上げられ、火山活動との関係が取り沙汰されたが、噴火に結びつきそうな他の現象は起きなかったとされている。 現在の知識に照らすと、この地震の原因としてもっとも考えやすいのは山頂火口の陥没未遂である。過去たびたび噴火を起こした山頂火口下の火道内には空洞があって、重力的に不安定であろう。こうした火口の「栓」をなす岩石の一部が、時おり地下の空洞に崩落し、その際に小地震や火口底の陥没、場合によっては小さな噴火を伴うことが、他の火山で知られている。 裾野市立富士山資料館に展示されている山頂火口の古いジオラマに、「昭和62年8月頃 直径50m 深さ30m 陥没した」との丸い赤紙に書かれたメモが、陥没位置と思われる火口内壁に付されている。この真偽を調べるために、富士山資料館の元学芸員とジオラマを作成した職員(故人)の家族、当時の富士山測候所員、地震を受けて臨時観測に出かけた気象庁職員たちへの聞き取り調査、臨時観測の報告書ならびに測候所の気象観測日誌の確認を、富士山資料館と気象庁火山課の協力を得て実施した。また、地震前後に撮影された写真(気象庁職員、国土地理院、静岡新聞社、筆者撮影)とも照合した。それらの結果を以下に記す。(1)富士山資料館のジオラマ上のメモは、当時の富士山測候所の職員(名前不明)からの伝聞によって資料館職員が付したものらしい。(2)山頂火口内壁の同規模の円形の陥没が、地震後の写真(1988年3月と12月、1990年代)で確認できるが、地震前の写真(1986年9月と11月、1987年4月)にも認められる(1970年代の写真には確認できず)。また、その陥没位置は、ジオラマに表示された場所の近傍ではあるが若干異なる。なお、当時の観測項目中に地変がないため、観測日誌に陥没の記述はない(有感地震のみ欄外に記載)。2001年以降の写真に陥没は認められず、崩落で埋まったらしい。(3)上記陥没の存在は当時の複数の測候所員が認識しており、1982~84年頃の台風による大雨後に陥没したと記憶する職員もいるが、本当に大雨が原因かは不明とのこと。また、1987年地震後は火口内を注視していたが、際立った変化は確認できなかったとの談話もある。なお、地震当時の8月26日に山頂火口内の温度測定を実施した臨時観測の報告書には「特に高温な場所は発見できず、噴気等も全くなかった。また、大きな落石の跡も見当たらなかった」と記され、それに携わった職員の記憶にもない。以上のことから、山頂火口内壁の陥没は、1987年の山頂地震より前の1980年代なかばに発生したと判断できる。しかし、両者の発生時期が近いことから、原因が同一の疑いが残る。また、原因の如何にかかわらず、陥没の発生自体は山頂火口内壁ならびに火口底の不安定さの象徴とみなすべきであろう。現行の富士山の噴火警戒レベルは、レベル上げの際に2を使用せず、1から3に上げることになっている。気象庁によれば、レベル2は火口が特定できる場合に限っており、富士山では事前に火口が特定できないためと理由づけされている。かつて演者の1人は、住民に比べて対策の遅れがちな登山者のためにレベル2の使用を提案したが(小山2014科学)、その後の富士山火山広域避難計画対策編(2015年)ではレベル1を「レベル1(活火山に留意)」と「レベル1(情報収集体制)」の2つに分け、後者を登山者対策に使用することとなった。しかし、具体的な対策としては山小屋組合等への周知や入山規制実施の準備などとされ、登山者の避難や入山規制を義務づけてはいない。しかしながら、レベル2は本当に不要だろうか? 噴火前に火口が特定できる場合は本当にないのか? 地下からマグマが上昇して噴火に至るモデルにとらわれ過ぎていないか? 陥没や噴気の急激な復活など、噴火以外の現象の危険箇所が事前に特定できた場合はどうするのか? 上記の対策では事態の展開が速い場合に登山者の安全が十分確保できないのでは? などの疑問があり、レベル2問題は上記協議会での継続審議事項となっている。
著者
青山 雅史
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

1.はじめに 鬼怒川・小貝川低地の茨城県常総市若宮戸地区における2015年関東・東北豪雨による溢水発生地点周辺では,1960年代以降に砂の採掘や太陽光発電ソーラーパネル設置のため河畔砂丘が大規模に削剥され,無堤区間において堤防の役割を果たしていた河畔砂丘の縮小が進行したことに伴い洪水に対する脆弱性が高まっていったことが確認された.本発表では,本地域における高度経済成長期の砂採取や最近(2014年以降)のソーラーパネル設置のための造成などによる河畔砂丘の人為的地形改変過程とこの地区の溢水発生地点との関係を示す.2.調査方法 2015年関東・東北豪雨による溢水発生地点の一つである鬼怒川・小貝川低地の茨城県常総市若宮戸地区鬼怒川左岸の河畔砂丘における1947年以降の人為的地形変化(特に河畔砂丘の平面分布と面積の変化)と土地利用変化について,多時期の米軍・国土地理院撮影空中写真の判読,それらの空中写真や旧版地形図等を用いたGIS解析,集落内の石碑に関する調査,住民への聞き取り調査などから検討した.3.調査結果 1947年時点における若宮戸地区の河畔砂丘は,南北方向の長さが2,000m弱,東西方向の最大幅は400m弱,面積42haであり,3~4列の明瞭なリッジを有していた.その後,この河畔砂丘は人為的土地改変によって次第に縮小していった.1960年代中期から1970年代前半にかけて砂の採取のために削剥され,この時期に面積が大きく減少し,明瞭なリッジ(高まり)が1列のみとなり幅が著しく減少した(細くなった)箇所が生じた.若宮戸集落内には,元来河畔砂丘上にあった石碑や石塔が砂採取工事のため1968年に移築されたことを記した碑が存在する.2014年以降は,ソーラーパネル設置のため,河畔砂丘の人為的削剥が行われた.これらの結果,洪水発生直後の2015年9月末時点の河畔砂丘の面積は,1947年時点の河畔砂丘面積の約31%と大幅に縮小していた.2014年頃からソーラーパネル設置のため河畔砂丘北半部の一部が削られて河畔砂丘が消失した区間が生じた.この区間には,応急対策として大型土のうが設置されていた.2015年関東・東北豪雨におけるこの地区での溢水は,河畔砂丘が人為的に削られて洪水に対して著しく脆弱化していた2箇所において発生した.2015年段階の河畔砂丘の面積は13haであり,1947年から2015年にかけて1/3弱に減少していた.
著者
中島 健介
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

はじめに大規模な津波は大気Lamb波を励起することが知られており(Arai et al 2011; Mikumo et al 2008 など), グローバルな微気圧計観測網から海面変位を推定することも行われている. 過去のその様な手法において, 津波の波源域での圧力偏差 p は津波に伴う海面鉛直速度 w を用いて p=ρ c w (cは音速)と与えられている. この関係は, 通常の音波を想定しており, 内部重力波, 重力の影響を強く受ける音波, そして Lamb 波の場合の適切さには疑問がある.実際, Watada (2009)は等温大気について, 下面境界に鉛直速度を与えて圧力応答を波数・周波数空間において調べ, 音波, 内部重力波,Lamb 波の分散関係に対応して顕著な違いがあることを示した. 対応して実空間での応答の調査が望まれるが, 過去には現実的な断層運 動を想定した計算が行われており(たとえば泉宮・長岡,1994) 理論的な理解には必ずしも繋がっていない. そこで本研究では理想的な状況を想定して津波による大気波動の励起を調べる.考察する系と数値モデル線形化した水平鉛直2次元の等温大気の方程式を,下面に与える鉛直流により駆動し, 応答を調べる.計算領域は, 水平2000km, 鉛直 100km であり,上端 20km はスポンジ層とする. 下端の鉛直流は2種類のものを想定する. 第一は, 時間空間的にガウス分布のパルスであり, 地震断層変位に対応する海面盛り上がりを想定する. 時定数は, 通常の地震から津波地震までを想定して 10秒から300秒までのパラメタ実験を行なう. 第二は, 水平にガウス分布の海面変位を左右に動かすものであり, 津波の水平伝播を想定する. 伝播速度は, 典型的な水深における津波伝播速度を想定して25m/sから 300m/s の範囲でパラメタ実験を行う. 方程式の離散化には spmodel(竹広ほか2013)を用いた.結果海面の盛り上がりで生じる圧力偏差は音速で水平に伝わるLamb波によって支配されるが, その波形は, 海面盛り上がりの時定数にほとんどよらないことがわかった. 振幅は, 海面の盛り上がりに対応して大気が static に鉛直変位することを想定して見積もることができる(詳細は当日)。伝播する津波から生じる応答としては、津波とともに伝わる強制波動(通常は内部重力波)に加えて, 音速で水平に伝わるLamb波が生じることがわかった. この成分の振幅は概ね津波伝播速度の2乗に比例し, 典型的なパラメタでは, 海面盛り上がりによる成分の半分程度の大きさとなる.理論的考察以上の結果は、鉛直流擾乱を持たない Lamb 波が大気下端での鉛直運動で励起されることを示す。このような必ずしも自明でない結果について、当日、理論的議論を行う。参考文献Arai et al (2011): Geophys. Res. Lett. doi:10.1029/2011GL049146Mikumo et al (2008): J. Geophys. Res. doi:10.1029/2008JB005710Watada(2009): J. Fluid. Mech. doi:10.1017/S0022112009005953泉宮・長岡(1994): 海岸工学論文集, Vol.41, p.241.
著者
梶田 展人 川幡 穂高 Wang Ke Zheng Hongbo Yang Shouye 大河内 直彦 宇都宮 正志 Zhou Bin Zheng Bang
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

近年、完新世の気候変動は人類文明の盛衰に強く関係していた可能性が多くの研究で指摘されている。地球温暖化による急激な気候変動が懸念されている現在、完新世の気候変動を定量的かつ高時間解像度で復元し、そのメカニズム及び人類への影響を明らかにすることは、将来の気候変動とその社会への影響を予測する上で重要である。 東アジアの揚子江デルタでは、約7.5-4.2 cal. yr BPにかけて世界で最古の稲作を中心とした新石器文明が栄えたが、4.2 cal. yr BPに突然消滅し、300年間にわたり文明が途絶えたが,この原因は明らかになっていない。そこで、本研究では文明盛衰の背景にあった環境変動を解明すること目的とした。 中国の東シナ海大陸棚に存在する陸源砕屑物堆積帯(Inner shelf mud belt)から採取された堆積物コア(MD06-3040)のアルケノン古水温分析(Uk37’)を行い、完新世の表層水温(SST)変動を高時間解像度で明らかにした。コア採取地は沿岸の浅海であるため、SSTは気温(AT)と良い相関がある([AT] = −10.8 + 1.35 × [SST]; r2 = 0.90, p < 0.001)。よって、Uk37’-SSTの復元記録から揚子江デルタのATを定量的に推定することができる。Uk37’-SSTのデータに基づくと、Little Ice Age (約0.1-0.3 cal. kyr BPの寒冷期)など全球的な気候変動と整合的な温度変化が復元されたことから、この指標の信頼性は高いと言える。そして、約4.4-3.8 cal. kyr BPには、複数回かつ急激な寒冷化 (3-4℃の水温低下、3-5℃の気温低下に相当) が発生していたことが示された。この寒冷化は4.2 kaイベントに呼応し、顕著な全地球規模の気候変動と関連するものと考えられる。この時期に、東アジア及び北西太平洋では、偏西風ジェットの北限位置の南下、エルニーニョの発生頻度の増加、黒潮の変調 (Pulleniatina Minimum Event) などの大きな環境変動が先行研究より示唆されている。これらの要素が相互に関係し、急激な寒冷化およびアジアモンスーンの変調がもたらされた可能性が高い。本研究が明らかにした急激で大きな寒冷化イベントは、稲作にダメージを与え、揚子江デルタの社会や文明を崩壊させる一因となったかもしれない。
著者
福井 敬一 佐藤 英一 新堀 敏基
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

2015年7月7日より,正式運用を開始した静止気象衛星ひまわり8号は先代のひまわり7号(MTSAT-2)に対し,大幅な機能強化が図られた.搭載された可視赤外放射計(Advanced Himawari Imager, AHI)は観測波長帯数が5バンド(可視1,赤外4)から16バンド(可視3,近赤外3,赤外10)へと,空間分解能もほぼ倍に高解像度化した.さらに,全球の観測頻度も60分ごとから10分ごとに向上するとともに,日本域を観測する領域観測1,2(東西2000 km,南北1000 km)や火山観測や台風観測などに利用される東西南北1000km四方の可動領域(領域観測3.機動観測)では常時2.5分ごとの観測も可能となっている.機動観測では台風観測時以外はカムチャッカの火山を対象に観測している時間が多い(2018年1月末現在はマヨン火山を含む領域を観測している).また,東西1000km,南北500kmの領域2か所(領域観測4,5.ランドマーク観測)を常時約30秒ごとに観測している.領域観測4,5の主目的は,位置合わせや月・深宇宙を利用した感度校正(Bessho et al., 2016)であるが,軌道が安定していることもあり,火山噴火を主対象とした領域を観測することも多く,2018年1月末現在,領域4,5は各々,インドネシアのアグン火山,桜島を含む領域を観測している.ひまわり8号の高解像度・高頻度観測によってMTSATに比べ小さな噴火も観測可能となるとともに,多バンド化によって,火山灰雲の高度推定精度が向上し,火山灰雲の光学的厚さや粒径などの情報を含む火山灰プロダクトの開発が進められている(Hayashi et al., 2016).さらに,火山ガス(SO2)の検出も可能となってきている(例えば,Ishii et al., 2018).桜島を含む領域では,ひまわり30秒データとともに,全球観測,日本域観測のデータも利用できるため,10分毎に4回,1分間で4枚の画像を取得できる時間帯がある.さらに,同じ領域を領域観測3,4,5で観測することも可能であり,このような運用を行えば,さらに高頻度の観測も可能になる.噴火直前の火口の温度状況や噴火直後の噴煙柱の成長の様子を捉えるため,ひまわり8号の30秒ごとの超高頻度観測(Super-Rapid Scan)データを利用した研究を開始した.Fukui et al. (2017) では桜島爆発直後の噴煙柱についてバンド3(波長0.64μm,空間分解能500m)の30秒毎データと桜島周辺で実施している高密度気象レーダーデータ(Sato et al., 2017),監視カメラ映像データとを比較検討した.今回はバンド3データと赤外データから求めた桜島爆発時の噴煙柱の上昇過程と噴煙上端の温度の時間推移から見た噴煙柱の成長過程について報告する.参考文献Bessho, K. et al. (2016) An Introduction to Himawari-8/9 —Japan’s New-Generation Geostationary Meteorological Satellites. J. Meteor. Soc. Japan, 94, 151-183, DOI:10.2151/jmsj.2016-009.Fukui, K. et al. (2017) Observations of volcanic eruption columns using Himawari-8 Super-Rapid Scan 30-sec imagery. JpGU-AGU Joint Meeting 2017, MIS02-P03Hayashi, Y. et al. (2016) Observation of volcanic ash clouds by Himawari-8. JpGU 2016, MIS26-06.Sato, E. et al. (2017) Volcanic ash plume observation by weather radars. JpGU-AGU Joint Meeting 2017, MIS02-P01.Ishii, K. et al. (2018) Using Himawari-8, estimation of SO2 cloud altitude at Aso volcano eruption, on October 8, 2016. Earth, Planets and Space, 70:19, DOI:10.1186/s40623-018-0793-9.
著者
石橋 克彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

●徳島県海陽町宍喰の大日寺に伝わる「円頓寺開山住持宥慶之旧記」(猪井・他,1982)の中の「当浦成来旧記書之写」(A)は,永正九年(1512)八月に洪浪が同地を襲い,浦中流失して約2200人が死亡したと記す.これは,石橋(2014,2015),Baba et al.(2017),馬場・他(2017)などが引用した『震潮記』中の記事(B)や,『大日本史料』『増訂大日本地震史料』『宍喰村誌』『海部郡誌』などが掲載する『宍喰浦旧記』(『徴古雑抄続編』所収,C)の元だと考えられる.BとCには大きな誤写があるが,Aについても幾つかの疑問がある.猪井・他(1982)が紹介した翻刻に拠って問題点を指摘する.●まず,「当浦成来旧記書之写/永正十一年正月に書記すとこれあり候」以下の中核部分に,以下のような内容的疑問がある:(1)橋より南の町は残らず流失したが死者は少なく,橋より北の町家は痛みは多くなかったが死人多く,「両町の人老若男女とも三千七百余人の相助し人一千五百余人也」という大被害のもとで,二人の城主が翌年十二月中旬までに諸寺諸社13を含む家数1805軒を再建したというが,被災地にそれほどの財的・人的・物的資源があったのか.(2)生存者1500余人に対して「町家千七百家」の再建は多すぎるだろう(しかも北町の損家は少数!).(3)北町で死者が多かったのは不自然.(4)海辺の大松原や集落周囲の山林を皆伐して建材を調達したというが,その後の高潮・豪雨災害を懸念せずに本当にやったのか.(5)「御取立(建築)の諸寺諸社」の中に祇園拝殿も記されているが,大永六年(1526)の再建棟札があるから(宍喰村誌),矛盾している.(6)城主「藤原朝臣下野守元信公 同宍喰村城主藤原朝臣孫六郎殿」と記すが,『阿波志』『宍喰町誌』によれば,愛宕山城主は藤原孫六郎元信,祇園山城主は藤原下野守持共で,名前が混乱している.●中核部分に続いて,「新寺駅路山一寺円頓寺宥慶/時に慶長十年三月四日書記す也」と末尾に記された「九ケ所寺々名附所付」などがあるが,その中の「御当代蜂須賀阿波守茂成公の御先祖蓬庵公」という記述にも次の疑問がある:(7)茂成(本名,家政)は天正十三~慶長五年(1585-1600)の藩主,以後元和六年(1620)までの藩主は子の至鎮,しかも蓬庵は家政の号だから,二重におかしい.●永正九年洪浪の記録全般に関する疑問:(8)宍喰は戦国期より前は高野山蓮華乗院の荘園だったが,文安二年(1445)の「兵庫北関入舩納帳」(林屋,1981)に木材運搬の宍喰船の記録が20件あり,その後も堺などとの交易や海部刀の輸出などが盛んだったというから(宍喰町誌),舟運被害が記されていないのは不自然ではないか.(9)宍喰の壊滅は畿内などにも影響を与えた可能性があり,他の記録があってもよいのではないか.●Aは「円頓寺開山住持宥慶之旧記」の一部だが,全体についての疑問:(10)冒頭に「元文四己未年の春駅路山円頓寺開山住持宥慶の旧記等円頓寺の二階の上鼡の巣の中より取出し候其の時々拝見の僧円頓寺住持嘉明真福寺住持大雲也旧記の本紙は円頓寺にこれあり候旧記本紙の通相違なく写取るもの也/時に元文四己未年三月十四日」とあるが,慶長十年(1605)頃の膨大な古記録(慶長九年津波のものも含む)が元文四年(1739)まで鼠の巣の中にあって,鼠害に遭わずに詳しく読めたのは不自然ではないか(後のほうの一部には「鼡喰い云々」とあるが).(11)「円頓寺開山住持宥慶」というが,同寺(大正元年<1912>大日寺に合併)の「御建立成来旧記之事」(宍喰町誌)は,「駅路山円頓寺住侶 法印快厳(花押)/慶長四己亥年正月二十八日書記之」として「当時開山住侶 <中略> 久米田寺多門院一代法印快尊弟子快厳時代也」と記すから,宥慶は開山住持ではないだろう.●以上の問題点は,書記や書写の各段階での思い違いや写し間違いの所為にされるかもしれない(翻刻ミスもありうるが,そのレベルではない).だが,不自然な記述が多く,Aの信憑性は低いのではないだろうか.ただし,Aの内容がすべて事実無根と言えるわけではなく,地元の記憶・伝承が融合されて架空の記録が作られたのかもしれず,生起年代は別として,個別的な歴史的事実は含まれているかもしれない.しかし「永正九年八月の宍喰浦洪浪災害」の実在に関しては,現段階では疑問と言わざるをえない.今後Aの記述内容を,史料学と地学的・考古学的現地調査によってさらに検討することが重要であろう.なお「宥慶之旧記」全体の精査は,慶長九年十二月十六日(1605.2.3)の宍喰の地震動・津波という歴史地震学の大問題に直結している.
著者
北本 朝展
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

IIIF Curation ViewerはIIIF(International Image Interoperability Framework)に準拠した画像ビューアである。IIIFはもともとミュージアムやライブラリにおける高解像度画像の公開に相互運用性をもたらすためのコミュニティ活動から始まった。そして現在までに4つの仕様が公開されており、仕様に準拠したオープンソースソフトウェアも次々に構築されることで、IIIFを活用した画像公開は世界中に広まりつつある。ただしIIIFコミュニティは文化資源に関わる人々が中心となっているため、科学分野における利用例は未だに多いとは言えない。衛星画像や医療画像など、高解像度画像が研究の重要な素材となる割には標準化が進んでいない分野が科学分野にも多いことを考えると、そうした分野へのIIIFの適用にはまだ開拓の余地が大きいと考えられる。そこで我々は、ひまわり8号・9号の高解像度気象衛星画像を例として[1]、科学分野におけるIIIFのニーズと課題の調査を進めている。我々はすでにTimeline APIとCursor APIという拡張仕様を提案し実装した[2]。これは文化資源における「書籍」という概念を衛星画像における「時系列」という概念に拡張するための仕様であり、Timeline APIは時系列のモデル化、Cursor APIは時系列のように要素数が長大な場合の部分アクセスという問題に対する解を提示するものである。さらに、もう一つの拡張仕様であるCuration APIは、様々なIIIFソースからテーマに沿って部分画像を収集する「キュレーション」を実現するための仕様である。これはいわば、部分画像を切り取る「ハサミ」と並べてまとめる「ノリ」の機能を合わせたものであり、文化資源に限らず科学分野においても、様々な文脈による画像の再利用を広げることができる。これらの拡張仕様の開発は、世界の中でも我々の研究グループが先進的に取り組んでいるため、既存のIIIF準拠ソフトウェアでは対応できないという問題がある。そこで我々はIIIFの拡張仕様に対応した画像ビューアであるIIIF Curation Viewer [3]の開発を進めている。これは人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)が推進し、本間淳氏が中心開発者となってアクティブに開発を進めるオープンソースソフトウェアである。このビューアは上記の拡張仕様に関する機能をすべて備えており、拡張仕様の参照実装にもなっている。またCuration APIで作成したキュレーションを保存するJSONストアとなるJSONkeeper [4]も、CODHが推進しTarek Saier氏が中心となって開発が進むオープンソースソフトウェアであり、これらの連携によってIIIF活用のためのソフトウェア基盤も広がりつつある。では気象衛星画像に対してキュレーション機能はどのように活用できるだろうか?第一に研究ツールとしての活用がある。自分が興味のある現象を矩形で囲んで「お気に入り」にブックマークすれば、後から現象を一覧することができるのが利点である。例えばカルマン渦が出現した気象衛星画像だけを集めれば、カルマン渦がどのような状況でどのように出現しているかを一覧でき、個々の場面に詳しいメタデータを付与すれば検索できる機能も将来的には実現する計画である。これによって、キュレーション機能は研究素材集として活用できるようになると考えられる。第二に、気象図鑑としての活用である。著名な現象が発生した日時の気象衛星部分画像をキュレーションに加えていくことで、「名場面集」を中心とした一種の図鑑を構築することができる。これは教育目的には有用な資源となるであろう。さらにこれを静止画だけでなく動画にすることで、時間発展する現象のダイナミクスを把握しやすい「動く図鑑」にすることも可能である。具体的には、Curation API、Timeline API、Cursor APIという3つの拡張仕様とImage APIという標準仕様を駆使し、それらをつなぐ簡単なスクリプトを開発することで、開始フレームと終了フレームをキュレーションに登録すれば、その間を線形補間でつないで動画化するシステムが構築できる。さらにIIIF Curation Viewerの固定幅切り取り機能を活用すれば、この動画を指定の大きさで作成することも可能となる。このように画像アクセスを標準化し、ツールをオープンソースとして組み合わせ可能な形で構築することによって、より複雑な処理もツール群の組み合わせによって簡単に実現可能となることが期待できる。このように相互運用性とオープンなアクセスに基づく画像公開は、衛星画像のような科学分野においてもメリットが大きいと考えており、その一つとしてのIIIFの可能性については今後も研究を進めていく計画である。 参考文献:[1] デジタル台風:次世代気象衛星「ひまわり8号・9号」画像/動画, http://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/himawari-3g/[2] IIIFを用いた高品質/高精細の画像公開と利用事例, http://codh.rois.ac.jp/iiif/[3] IIIF Curation Viewer, http://codh.rois.ac.jp/software/iiif-curation-viewer/[4] JSONkeeper, https://github.com/IllDepence/JSONkeeper
著者
田中 義洋 松本 至巨
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

高等学校の「地理」と「地学」は、従来から取り扱い方が異なるものの、内容の一部が重複している。例えば、地形や気候に関して「地理」では人間生活との関わりを、「地学」では形成過程や原理を中心に扱っているが、明らかに両科目で扱っている内容は重複している。今後、このように重複する部分について、両科目の特性を生かしながらどのように取り扱うべきかを検討する必要があると考えられる。すでに自然環境と防災など共通に取り扱っている内容もあり、生徒が学んだことを将来生かせるように身につけてもらうためには、両科目の教員間の連携・調整が必要である。今回の発表では、現在「地理A」および「地学基礎」を併置している本校において、取り扱う内容をどのように連携・調整しているかを報告し、今後よりよい指導に向けてどのように行っていくべきかを提案したい。
著者
林 信太郎
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

日本のジオパークは高校教育での地球惑星科学教育を支援できるのだろうか?答えはイエスである。ジオパークの高校への支援はジオパークにとって大きな意味がある。また,ジオパークからの支援は高校にとって有用である。はじめに,「地学基礎」,「地理総合」のカリキュラムについて述べ,その後ジオパークヘのメリット,高校へのメリットについて述べる。なお,カリキュラムについては2018年2月14日に示された新学習指導要領(案)に基づいて述べる。また,「地学基礎」と「地理A」の現行の教科書も参考にした。<「地学基礎」,「地理総合」のカリキュラムとジオパークによる支援可能な要素>「地学基礎」:大きく「地球のすがた」「変動する地球」に区分されている。これらのうち「地球のすがた」のプレートの運動や火山活動と地震,「変動する地球」の古生物の変遷,「地球の環境」の日本の自然環境のもたらす恩恵や災害,それらと人間生活との関わりについて,ジオパークには良い教材があり,探究活動のテーマも豊富である。「地理総合」:「地理総合」の内容は大きく3つに分けられる。すなわち「地図や地理情報システムで捉える現代世界」「国際理解と国際協力」「持続可能な地域づくりと私たち」である。このうち,「持続可能な地域づくりと私たち」は,さらに「自然環境と防災」「生活圏の調査と地域の展望」に区分される。「自然環境と防災」は課題探究活動の中で,自然災害,それへの備えや対応について知識を身につけ,ハザードマップや新旧地形図を読み取りまとめる技能を身につける。日本のジオパークの中には自然災害を主要なテーマとするものが多く(洞爺湖有珠山ジオパーク,三陸ジオパークなど)「自然環境と防災」分野では多くの支援が可能である。また,「生活圏の調査と地域の展望」の課題探究では,地域の成り立ちや変容,持続可能な地域づくりについて多面的・多角的に考察することとなっている。ジオパークの活動は持続可能な地域づくりを目的としている。したがって,ジオパークそのものが,「生活圏の調査と地域の展望」の教材となり,多くの支援が可能である。「地学基礎」と「地理総合」の相補的関係:従来の「地理 A」と「地学基礎」は,地形分野に関して相補的である。「地学基礎」では,地球内部の力が扱われるが,地形への言及は少ない。一方地形については「地理 A」で学ぶことができた。しかし,「地理総合」でどのように地形が扱われるか,詳細はわからない。学習指導要領(案)では地形への言及は少ない。ただし,「地理 A」の教科書と対応する学習指導要領とを比較すると,学習指導要領にほとんど言及のない地形に関する内容が教科書には含まれている。もし同様に「地理総合」の教科書に地形に関する内容が含まれているとすれば,「地学基礎」と「地理総合」の両方を学ぶことで相補的な地形理解が可能であろう。また,「地理総合」の自然災害に関する探究活動では,地形を題材にする可能性が高い。したがって,ジオパークにによる地形についての学習支援が重要であろう。また,「地学基礎」では地震や火山について災害の要因は学ぶが,災害そのものの学習は十分ではない。例えば,土石流や豪雪については,現行「地学基礎」の教科書には記述が見られない。一方「地理総合」では,地域の自然災害が探究活動の大きなテーマとなる。災害を多面的・多角的に理解するためには,「地学基礎」と「地理総合」の両者の学習が必要である。両者の学習が困難な場合は,ジオパークによる支援が有効である。<「地学基礎」,「地理総合」への支援:ジオパークのメリット>高等学校の「地学基礎」,「地理総合」の授業を支援することは,そもそもジオパークの3つの活動(保全,教育,地域の持続可能な発達)の一つの「教育」そのものである。このほかに,「地学基礎」,「地理総合」の授業支援には,ジオパークにとって3つのメリットがある。第1にジオパークを支える人材を生み出す効果がある。「地学基礎」,「地理総合」の探究的学習が行われた場合,地域の課題やジオパークの活動に関心のある人材が生まれる可能性が高い。第2に「地理総合」の探究的活動は地域活性化に直接貢献する可能性があり,その成果をジオパークに活かせる可能性がある。第3に「地学基礎」,「地理総合」の授業支援は,防災・減災にも有用である。したがって,防災・減災に関わる人材を生み出す可能性がある。<「地学基礎」,「地理総合」への支援:高校側のメリット>「地学基礎」,「地理総合」への支援は高校にとって3つのメリットがある。第1にジオパークの専門員や大学の教員を授業に活用できることである。ジオパーク関係の学術関係者は,対話やグループ活動を通じた授業を行える人材が多い。日常的にガイド教育を行うとともに,対話的に進行するNHKの人気番組「ブラタモリ」の影響を受けているためである。第2に,地球惑星科学を総合的に学ぶことが可能になる。「地学基礎」,「地理総合」を単独で学んだ場合,地学的現象を総合的な地球惑星科学の視点から学ぶことはむずかしい。第3にジオパークそのものに探究的活動の素材を見つけることができることである。以上のように,「地学基礎」,「地理総合」への支援はジオパーク側にも高校側にもメリットがある。したがって,ジオパークからの「地理総合」と「地学基礎」への支援は可能である。支援を活発化させるためには,ジオパークから高校への働きかけが重要であろう。
著者
中島 健介
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

はじめに大規模な津波は大気Lamb波を励起することが知られており(Arai et al 2011; Mikumo et al 2008 など), グローバルな微気圧計観測網から海面変位を推定することも行われている.過去のその様なインバージョンにおいて, 津波の波源域での圧力偏差 p は津波に伴う海面鉛直速度 w を用いて p=ρ c w (cは音速)と与えられている. この関係は, 通常の音波を想定しており, 内部重力波, 重力の影響を強く受ける音波, そして Lamb 波の場合の適切さには疑問がある.実際, Watada (2009)は等温大気について, 下面境界に鉛直速度を与えて圧力応答を波数・周波数空間において調べ, 音波, 内部重力波,Lamb 波の分散関係に対応して顕著な違いがあることを示した. 対応して実空間での応答の調査が望まれるが, 過去には現実的な断層運動を想定した計算が行われており(たとえば泉宮・長岡,1994) 理論的な理解には必ずしも繋がっていない. そこで本研究では理想的な状況を想定して津波による 大気波動の励起を調べる.考察する系と数値モデル線形化した水平鉛直2次元の等温大気の方程式を,下面に与える鉛直流により駆動し, 応答を調べる.計算領域は, 水平 2000km, 鉛直 100km であり,上端 20km はスポンジ層とする. 下端の鉛直流は2種類のものを想定する. 第一は, 時間空間的にガウス分布のパルスであり, 地震断層変位に対応する海面盛り上がりを想定する. 時定数は, 通常の地震から津波地震までを想定して 10秒から300秒までのパラメタ実験を行なう. 第二は, 水平にガウス分布の海面変位を左右に動かすものであり, 津波の水平伝播を想定する. 伝播速度は, 典型的な水深における津波伝播速度を想定して25m/sから 300m/s の範囲でパラメタ実験を行う. 方程式の離散化には spmodel(竹広ほか2013)を用いた.結果: 海面の盛り上がりへの応答波源域から遠方での圧力偏差は音速で水平に伝わるLamb波によって支配されるが, その波形は, 海面盛り上がりの時定数にほとんどよらないことがわかった. 振幅は, 海面の盛り上がりに対応して大気が static に鉛直変位することを想定して見積もることができる(詳細は当日). この結果は, はじめに挙げた表式とは全く異なり, また, 防災上極めて重要な性質である.結果: 伝播する津波への応答津波とともに伝わる強制波動(通常は内部重力波)に加えて, 音速で水平に伝わるLamb波が生じることがわかった. この成分の振幅は概ね津波伝播速度の2乗に比例し, 典型的なパラメタでは, 海面盛り上がりによる成分の半分程度の大きさとなる. 解析的考察について当日述べる.参考文献Arai et al (2011): Geophys. Res. Lett. doi:10.1029/2011GL049146Mikumo et al (2008): J. Geophys. Res. doi:10.1029/2008JB005710Watada(2009): J. Fluid. Mech. doi:10.1017/S0022112009005953泉宮・長岡(1994): 海岸工学論文集, Vol.41, p.241.
著者
増田 耕一
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

気象学は地学の、気候学は地理の、それぞれ部分と考えられてきたけれども、両者の内容は大きく重なっている。ここでは両者をあわせて、何を必修事項としたらよいかを考えてみたい。地理にも関連するのだが、ひとまず理科の地学を念頭において、内容を分類するための、いくつかの軸をあげてみる。1. 基礎と応用。地学の場合とくに、防災や環境問題解決などの公益につながる応用が重要だろう。2. 過去・現在・未来。現在は、近代科学による観測データが得られる時代をさす。過去はヒトが出現してからの時代も含むが、地学ではそれよりも古い時代を扱うことが重要だ。未来についてできるのは不確かな予測だが、それがほしいこともある。3. 注目する空間スケール。4. 対象を単純化したとらえかたと、多様性や個別事実を重視したとらえかた。5. 数理物理的考えかた、つまり物理法則に基づいて原因から結果に向かう態度と、博物学的考えかた、つまり現実世界の観察で得られる物証からそれが生じた原因を考えていく態度。最重要と主張するつもりはないが、全地球規模の気候変化のしくみを理解することは、地球温暖化の「緩和」(温室効果気体排出削減)が世界の政治課題となった現代の民主主義国家の主権者がもつべき知識項目だと思う。文部科学省が2018年2月14日に出した次期高校学習指導要領の案の「地学基礎」での大気・水圏関係の内容は、これに合っている。基礎として、「大気と海洋」のうち「地球の熱収支」で、太陽放射と地球放射の収支を扱い、温室効果にふれ、「大気と海洋の運動」では海洋の層構造と深層循環にもふれる。その応用として「地球環境の科学」のところで地球温暖化を扱うことができる。ただし、地球温暖化とエルニーニョ現象が単純に並列されているのはうまくない。気候変動には内部変動と外部強制による変動があり地球温暖化は後者だという認識が必要だ。(「地学基礎」の範囲でエルニーニョ現象を扱うのは無理があると思う。)ただしこの主題は、さきほどあげた軸3では全地球規模、軸4では単純化したとらえかた、軸2では数理物理的アプローチに偏っている。人為起源の地球温暖化があろうがなかろうが、人は気候に適応することが必要だ。そしてその適応する対象は、世界平均値ではなく、それぞれの場所のローカルな気候なのだ。また、地理学の観点で、人間社会と、また地形・水文・植生などとの相互作用を考えるとき問題になる気候も、おもにローカルなものだ。ただし、ローカルな気候には多様性がある。また、ローカルな気候の変化を因果関係を追って述べることはむずかしい。教科内容のすべてが必修ではなくoptionalな項目もあることを前提として、ローカルな気候に関する学習はoptionalな項目とし、その基礎となりうることがらを必修項目にすることを考えるべきだろう。●大気・水圏の現象にはさまざまな空間・時間スケールのものがあること。そして、空間スケールの大きいものは時間スケールも大きい傾向があること。●天気。気温、気圧、風向風速、降水量などの数値はどのように表現されるか、温帯低気圧とはどんなものか、など、テレビなどの天気予報を理解できるための基礎知識。(次期学習指導要領案では「地学基礎」ではなく「地学」のほうに含まれている。) 空間スケールは数百kmから数千kmであって、地球全体よりは小さいが、ローカルよりは大きい。●地表面(地面・海面)での熱収支・水収支。ここでいう「熱」とはエネルギーのうち運動エネルギーを省略したものの便宜的表現である。熱収支は、放射と、顕熱・潜熱の乱流輸送からなる。水収支は、降水・蒸発・流出からなる。蒸発の潜熱が両方にはいっている。雪氷がからむ場合はもう少し複雑になる。●気候帯の概略。熱帯、温帯、寒帯と 乾燥地帯が地球上でどのように分布するか。「地学基礎」の「大気と海洋」で教えられる「大気の大循環」とリンクさせたい。●気候と植生(陸上生態系)の関係。ケッペンから引き継ぐべきことは、気候区分ではなく、植生のタイプが気候によって制約されているという認識だと思う。制約要因としては、生育期間の温度または利用可能なエネルギー、利用可能な水分、最低温度があげられる。
著者
窪田 薫
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

北日本の浅海底から見つかった二枚貝の一種ビノスガイ(Mercenaria stimpsoni)は100歳を超す寿命を持ち、日本産の二枚貝としては最長寿であることが最近明らかになった。本発表では、 岩手県大槌・船越湾から得られたビノスガイの殻の成長パターンについて概観するとともに、年輪解析と放射性炭素分析を通じて明らかになった、過去の海水の放射性炭素変動と、2011年3月の大津波に伴う船越湾のビノスガイの大量死について発表する。年輪幅の変動は個体間で同期しており、厳密な暦年代を構築することを可能にしている(年輪年代学)。複数個体のビノスガイの殻の放射性炭素分析結果をもとに、北西太平洋高緯度域としては初となる、1950~1960年代に盛んに行われた大気圏核実験に伴う14C濃度の急増を含む、海水の放射性炭素変動曲線(Bomb-14C曲線)を復元した。復元されたBomb-14C曲線の形状から、三陸沿岸の浅海域においては、津軽暖流(対馬海流を起源とする)の影響が強く見られることがわかった。さらに、得られたBomb-14C曲線を船越湾の海底から得られた死殻の高精度の年代決定ツールとして用いることで、2011年3月の大津波に伴う海底環境への擾乱がビノスガイの大量死を招いていたことが明らかになった。さらに、過去の大津波(1933年の昭和三陸地震および1896年の明治三陸地震)が同じくビノスガイの大量死を招いていた可能性についても示す。
著者
海野 進 仙田 量子 石塚 治 田村 明弘 草野 有紀 荒井 章司
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

地球の全マントルの50–70 wt%を占める枯渇したマントルは大陸地殻を形成した融け残り岩とされている[1]。これらの枯渇したマントルは,クラトン下のリソスフェアや海底下の対流するアセノスフェアを構成するが,それらがいつ地球創生期の始原的マントル(PUM)から分化し,どのようなプロセスで形成されたかを明らかにすることはマントルの物質的進化を理解する上で重要である。 カンラン岩の溶融時にOsの親核種であるReがメルトとともに完全に融け残り岩から失われると,融け残り岩のOs同位体比はそれ以降変化しない。この仮定のもとに始源的マントル(PUM)から融け残りカンラン岩を生成したRe枯渇年代が決められる。クラトン下のリソスフェアの多くはOs同位体比(187Os/188Os)が0.11以下と低く,始生代末~原生代初めのRe枯渇年代を示すことから,その頃にPUMが大規模に融解し,対流するマントルから切り離された融け残り岩と考えられる[2, 3]。一方,中央海嶺玄武岩(MORB)のソースとなる対流するマントル(DMM)は,Os同位体比が0.116–0.135と幅広く,多くは10億年前より若いRe枯渇年代を示すことから,原生代以降の様々な時期に対流による溶融と混合・攪拌を通じて形成されたと考えられてきた。しかし,高枯渇ハルツバージャイトを主体とするクラトン下リソスフェアとは異なり,DMMの多くはPUMからメルトを3–4 wt%取り去った程度の低枯渇度で,溶融後も相当量のReが残存していたはずである。すなわちDMMは従来考えられた以上に古い時代に分化した可能性がある。 そこでRe-Osアイソクロンが適用困難な融け残りカンラン岩について,Re/Os比の初期値をメルト組成から独立に推定する方法を提案する [4]。PUMからの分化時に融け残りカンラン岩と平衡であったメルトのREE組成についてモデル計算をし,融け残り岩のYb濃度を推定することによってPUMの部分溶融度,すなわち融け残り岩のRe/Os比の初期値を決めることができる。このRe/Os比と Os同位体比をもとにOs同位体進化曲線を計算すれば,分化年代が得られる。最近,著者らは伊豆―小笠原―マリアナ(IBM)前弧域の無人岩マグマ由来のCrスピネルとメルト包有物の解析から,初生無人岩マグマのソースマントルが2種類あり,それぞれ37–32億年前と17–15億年前にPUMから分化した融け残り岩であることを明らかにした[4]。同様に,Os同位体比0.125を有する平均的なDMMは26–22億年前にPUMから分化したことがわかった。これらの3つの年代は丸山[2002]が示した大陸形成が最も活発であった時期と合致する(図1)。また,平均的なDMM分化が起きた26–22億年前はクラトン下リソスフェアのRe枯渇年代と一致する。このことから,大規模な大陸形成をもたらしたマントル対流の活動期パルスが幅広いOs同位体比を示すDMMの生成にも関与したと考えられる。[1] Zindler, A., and Hart, S., 1986. Ann. Rev. Earth Planet. Sci.,14, 493 - 571[2] 仙田量子ほか,2012. 岩石鉱物科学,41, 211 – 221[3] Walker, R. J., 2016. Geochemical Perspectives, 5[4] Umino, S. et al., 2018. Island Arc, doi: 10.1111/iar.12221[5] 丸山, 2002.プルームテクトニクスと全地球史解読, 岩波書店
著者
加納 靖之 橋本 雄太
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

京都大学古地震研究会では,2017年1月に「みんなで翻刻【地震史料】」を公開した(https://honkoku.org/).「みんなで翻刻」は,Web上で歴史史料を翻刻するためのアプリケーションであり,これを利用した翻刻プロジェクトである.ここで,「みんなで」は,Webでつながる人々(研究者だけでなく一般の方をふくむ)をさしており,「翻刻」は,くずし字等で書かれている史料(古文書等)を,一字ずつ活字(テキスト)に起こしていく作業のことである.「みんなで翻刻」では,正式公開から約1年で,東京大学地震研究所図書室が所蔵する資料のうち「古文書」に分類されデジタル画像化されている421点のうち386点のの翻刻がひととおり完了している.総入力文字数は約356万文字である.古地震(歴史地震)の研究においては,伝来している史料を翻刻し,地震学的な情報(地震発生の日時や場所,規模など)を抽出するための基礎データとする.過去の人々が残した膨大な文字記録のうち,活字(テキスト)になってデータとして活用しやすい状態になっている史料は,割合としてはそれほど大きくはない.「みんなで翻刻」によって大量のテキストデータを生成することができた.このテキストデータに対して,計量テキスト分析を行なった.分析には,計量テキスト分析(テキストマイニング)のために開発されたソフトウェアであるKH Coder(http://khc.sourceforge.net/)を利用した.まず,頻出語の計数を行った.頻出語の上位には「地震」「崩」「水」「人」「山」「火」「町」「寺」「宿」「川」「破損」などが挙がった.これらは,地震とその被害に関する語であり,既刊の地震史料集(たとえば,『大日本地震史料』,『新収日本地震史料』など)による翻刻からの印象とほぼ同じである.この印象を定量的に評価できたことになる.また,共起関係についても分析した.「地震」という語には,方角や地名に関する語だけでなく,被害に関する語が伴なうことが多いことがわかった.それぞれの資料で対象となっている地震によって,被害のあらわれ方が違うことから,資料ごとにより詳細に分析することによって,テキスト分析から地震の様相を抽出できる可能性がある.これらのテキスト分析には適切な辞書が必要である.資料の年代や地震記事であることに対応した辞書を作成する必要がある.既存の辞書を利用しつつ,ここでの分析の結果を再帰的に反映させることによって,よりよい辞書を作成できるだろう.謝辞:「みんなで翻刻【地震史料】」は京都大学古地震研究会によって公開・運営されている.「みんなで翻刻【地震史料】」では,東京大学地震研究所所蔵の資料の画像データを利用した.「みんなで翻刻【地震史料】」の翻刻は,有志の参加者によって実施されている.
著者
HyeJeong Kim Hitoshi Kawakatsu Takeshi Akuhara
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

Conventional receiver function methods assume horizontal geometry and isotropy for velocity discontinuity analysis. However, in subduction zones, the isotropy assumption unlikely holds. In case of anisotropic velocity or dipping velocity discontinuity P-to-S receiver function show variation by back azimuth (Shiomi & Park, 2008). We employed the harmonic decomposition method (Bianchi et al. 2010, Agostinetti & Miller, 2014) to extract non-isotropic component from receiver functions to image the Pacific plate subduction under Japan. The harmonic decomposition gives five components (isotropic, cos(kθ), sin(kθ) terms for k=1, 2) from linear matrix inversion using radial and transverse receiver functions. The preliminary analysis using data from three Hi-net stations (ANIH, IHEH, KZMH) located along the 40N latitude with varying distance from trench shows following features: (1) Within first harmonics, the EW (sin(θ)) component is larger than the NS (cos(θ)) component at timing of the oceanic Moho phase. This well reproduces westward dipping of the Pacific slab. (2) In upper most crust (0-1 s), amplitude of k=2 harmonics is larger than k=1 harmonics, which implies large horizontal symmetric axis anisotropy. (3) Between continental Moho and top of subducting oceanic crust, large k=1 and k=2 harmonics are observed in mantle wedge . (4) Below subducting oceanic crust, both k=1 and k=2 harmonic components decrease consistently for all three stations, but locally large k=1 harmonics appear. Signature of previously reported hydrated mantle above subducting oceanic crust (Kawakatsu & Watada, 2007) is observed in station ANIH. At later positive peak, large amplitude of k=1 and k=2 harmonics is observed, which might indicate existence of dipping structure having horizontal symmetric anisotropy beneath. Our results show a possibility of applying the harmonic decomposition method to image non-isotropic component of subduction zones using receiver functions.
著者
長谷川 精 吉田 英一 勝田 長貴 城野 信一 丸山 一平 南 雅代 淺原 良浩 西本 昌司 山口 靖 Ichinnorov Niiden Metcalfe Richard
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-05-11

Spherical Fe-oxide concretions on Earth, in particular in Utah, U.S.A, have been investigated as an analogue of hematite spherules discovered in Meridiani Planum on Mars, in order to support interpretations of water-rock interactions in early Mars. Although several formation mechanisms have been proposed for the concretions on Earth and Mars, it is still unclear whether these mechanisms are viable because a precise formation process and precursor of the Fe-oxide concretions are missing. Here, we show evidence that Fe-oxide concretions in Utah and newly discovered Fe-oxide concretions in Mongolia, had spherical calcite (CaCO3) concretions as precursors. Observed different formation stages of calcite and Fe-oxide concretions, both in the Navajo Sandstone, Utah, and the Djadokhta Formation, Mongolia, indicate the formation process of Fe-oxide concretions as follows: (1) calcite concretions initially formed by groundwater evaporation within aeolian sandstone strata; (2) the calcite concretions were dissolved by infiltrating Fe-rich acidic waters; and (3) mobilized Fe in acidic waters was fixed to form spherical FeO(OH) (goethite) crusts on the pre-existing spherical calcite concretion surfaces due to the pH-buffering dissolution reaction. The similarity between these Fe-oxide concretions on Earth and the hematite spherule occurrences in Meridiani Planum, combined with evidence of acid sulfate water influences on Mars, suggests that the Martian spherules also formed from dissolution of pre-existing carbonate concretions. Formation of recently discovered spherical-shaped nodules in Gale crater on Mars can also be explained by a similar process, although evidence of acid water influence is not obvious in lower strata of the Gale crater. The hematite spherules in Meridiani Planum and spherical nodules in Gale crater are possibly relics of carbonate minerals formed under a dense thick carbon dioxide atmosphere in the past.
著者
吉田 英一 山本 鋼志 長谷川 精 勝田 長貴 城野 信一 丸山 一平 南 雅代 浅原 良浩 山口 靖 西本 昌司 Ichinnorov Niiden Metcalfe Richard
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

海成堆積岩には,球状の炭酸塩コンクリーション (主にCaCO3)が普遍的に産出する. その形状は多くの場合,球状を成し,かつ非常に緻密で風化にも強く,またその内部から保存良好の化石を産する. しかし,なぜ球状をなすのか,なぜ保存良好な化石を内蔵するのかなど,その形成プロセスはほとんど不明であった.それら炭酸塩球状コンクリーションの成因や形成速度を明らかにすることを目的に,国内外の試料を用いて,産状やバリエーションについての多角的な調査・解析を行ってきた.その結果,生物起源の有機物炭素成分と堆積物空隙水中のカルシウムイオンが,急速(サイズに応じて数ヶ月~数年)に反応し,炭酸カルシウムとして沈殿しつつ成長していくことを明らかにした(Yoshida et al.,2015, 2018a).そのプロセスは,コンクリーション縁(反応縁)の幅(L cm)と堆積物中での重炭酸イオンの拡散係数(D cm2/s)及び反応速度(V cm/s)を用いてD = LVと単純化できることから,海成堆積物中の球状コンクリーションに対し,汎用的にその形成速度を見積もることができる(Yoshida et al.,2018a,b).また,風成層中においては,アメリカ・ユタ州のナバホ砂岩層中の球状鉄コンクリーションがよく知られているが,ゴビ砂漠やヨルダンの風成層中からも産出することを初めて確認した.これらの球状鉄コンクリーションは,風成層中の空隙水の蒸発に伴って成長した球状炭酸塩コンクリーションがコアとなり,鉄を含む酸性地下水との中和反応によって形成されることを明らかにした(Yoshida et al.,2018c).さらに,このような酸性水と炭酸塩との反応は,火星表面堆積層中で発見された球状鉄コンクリーションの生成メカニズムと同じである可能性がある(Yoshida et al.,2018c).本論では,これら球状の炭酸塩および鉄コンクリーションの形成メカニズムと,将来的な研究の展開について紹介する.