- 著者
-
尾西 恭亮
- 出版者
- 日本地球惑星科学連合
- 雑誌
- 日本地球惑星科学連合2019年大会
- 巻号頁・発行日
- 2019-03-14
橋梁床版は,土砂化等の発生により,急速に劣化が進行することが知られている。点検サイクル内に抜け落ちにまで発展する事例が発生し,目視点検以外の事前検知手法の開発が望まれている。地中レーダは,地下空洞探査などに広く用いられており,有効な探査手法のひとつと考えられている。しかし,地中レーダで橋梁床版の損傷域を特定するのは困難な場合が多い。この理由のひとつは,探査対象深度が浅いことにある。橋梁床版の損傷は上面から進行することが多い。橋梁床版の上面深度は舗装厚により決定される。舗装厚は5~10cm程度の範囲に入っている場合が多い。深度5~10cmという範囲は,一般的な地中レーダの記録では,空中を伝播する光速度の直接波と,地表を伝播する地盤速度の直達波が同じ走時域に混在するため,イメージングが困難となる場合が多い。そこで,橋梁床版モデルを作成し,種類の異なる地中レーダで探査を行ったので,探査記録を比較した結果を示す。床版モデルは,アスファルト舗装の着脱が容易な設計となっており,損傷域の状態を簡単に変更できる特徴を有する。この結果,損傷域の誘電特性が周囲より十分異なれば,比較的に容易に異常信号を検知できることがわかった。しかし,検知された異常信号を用いても,表面からの深さ,粒径,水分状態などの異常の状態を特定するには困難であるため,床版モデルや数値計算等の解析を進め,信号特性を把握した上で,実際の床版の記録を解釈することが重要となる。