著者
尾西 恭亮
出版者
社団法人 物理探査学会
雑誌
物理探査 (ISSN:09127984)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.85-94, 2014 (Released:2017-03-02)
参考文献数
67

本稿では,非在来型天然ガスに特有な吸着ガスについて解説し,物理探査による探査の可能性について言及する。コールベッドメタンの主たる賦存形態は吸着ガスであり,シェールガスの約半分も吸着ガスの形態で貯留していると考えられている。試料分析の結果,女川層の珪質頁岩は北米のシェールガス賦存層と同等のガス吸着能力を有し,南関東天然ガス田の泥岩も十分なガス吸着能力を有している可能性を示した。世界全体における吸着ガスの資源量は大きく,有望な天然ガス資源である。吸着ガスの回収には,遊離ガスに比べより長期間に及ぶ継続した生産が必要なため,初期段階において開発リスクを低減させるガス生産量推移の推定技術が重要である。そのため,物理探査による埋蔵量や生産性の評価手法は天然ガス資源量の増大に貢献する。吸着ガスを生産対象ガスとするためには,ガス吸着量分布の情報が重要である。現在,ガス吸着可能量を直接推定する探査技術は提示されていない。一方,物理検層による間接的なガス吸着量の推定手法は様々な手法が提案されている。
著者
尾西 恭亮
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

橋梁床版は,土砂化等の発生により,急速に劣化が進行することが知られている。点検サイクル内に抜け落ちにまで発展する事例が発生し,目視点検以外の事前検知手法の開発が望まれている。地中レーダは,地下空洞探査などに広く用いられており,有効な探査手法のひとつと考えられている。しかし,地中レーダで橋梁床版の損傷域を特定するのは困難な場合が多い。この理由のひとつは,探査対象深度が浅いことにある。橋梁床版の損傷は上面から進行することが多い。橋梁床版の上面深度は舗装厚により決定される。舗装厚は5~10cm程度の範囲に入っている場合が多い。深度5~10cmという範囲は,一般的な地中レーダの記録では,空中を伝播する光速度の直接波と,地表を伝播する地盤速度の直達波が同じ走時域に混在するため,イメージングが困難となる場合が多い。そこで,橋梁床版モデルを作成し,種類の異なる地中レーダで探査を行ったので,探査記録を比較した結果を示す。床版モデルは,アスファルト舗装の着脱が容易な設計となっており,損傷域の状態を簡単に変更できる特徴を有する。この結果,損傷域の誘電特性が周囲より十分異なれば,比較的に容易に異常信号を検知できることがわかった。しかし,検知された異常信号を用いても,表面からの深さ,粒径,水分状態などの異常の状態を特定するには困難であるため,床版モデルや数値計算等の解析を進め,信号特性を把握した上で,実際の床版の記録を解釈することが重要となる。
著者
宮町 宏樹 泊 知里 八木原 寛 井口 正人 為栗 健 山本 圭吾 大倉 敬宏 安藤 隆志 尾西 恭亮 清水 洋 山下 裕亮 中道 治久 山脇 輝夫 及川 純 植木 貞人 筒井 智樹 森 済 西田 誠 平松 秀行 小枝 智幸 増田 与志郎 加藤 幸司 畠山 謙吾 小林 哲夫
出版者
特定非営利活動法人日本火山学会
雑誌
火山 (ISSN:04534360)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.227-237, 2013-03-29

2008年に実施された屈折法地震探査によって得られたP波初動走時により,姶良カルデラおよび桜島火山の深さ3kmまでの速度構造を推定した.本研究地域の基盤層である四万十層群は4.6-5.0km/sのP波速度を持ち,姶良カルデラの中央部に向け傾斜している.姶良カルデラの中央部には,4.2-4.4km/sの低速度域が深さ1.5-3kmに存在している.そして,この低速度域はカルデラ下に存在する深部マグマ溜まりからのマグマ供給系が活発であることを示唆している.また,基盤層は鹿児島地溝帯の北西域の境界に沿って深さ1kmから2.5kmに急激に落ち込んでいることがわかった.桜島火山の速度構造は3.6-3.7km/sの領域が存在することで特徴づけられる.桜島火山の山頂直下で発生している火山性地震の震源域と速度構造の比較から,地下構造が種々の火山性地震の震源域の広がりに強い影響を与えていることを示した.