- 著者
-
小口 高
- 出版者
- 日本地球惑星科学連合
- 雑誌
- 日本地球惑星科学連合2019年大会
- 巻号頁・発行日
- 2019-03-14
2022年度から高校の地歴科で「地理総合」が必修となる。地理総合は現行の地理Aを基礎とするが、地理情報システム(GIS)によるデジタル情報の処理、自然災害、地球環境問題といった理系的な要素が重視されている。したがって、地理総合は高校生が地理学のみならず地学の素養を高めることにもつながる。高校の理科では、2012年度に「地学基礎」が新科目となった結果、以前よりも地学を学ぶ高校生が増えた。しかし履修率は三割弱であるため、多くの高校生にとっては地理総合が地球惑星科学に関連する内容に触れる主要な機会となる。したがって、地理総合が高校生の関心を惹きつけ、その内容が大学への進学や将来の職業の選択の際に考慮されれば、地理学のみならず地学を含む地球惑星科学の発展につながる。このような状況を作り出すためには、日本地球惑星科学連合や日本学術会議のような、地理学と地学の研究者が共に参加している組織における活動が効果的である。これらの組織の構成員の多くは大学や研究所の研究者であるため、高校の地歴科や理科の教員との連携体制を作ることも重要である。2018年度には、日本学術会議の地球惑星科学人材育成分科会の下に地学・地理学初等中等教育検討小委員会が設置され、主に高校における地学・地理教育の充実に向けた検討を行っている。この小委員会には大学と高校の教員とともに、文科省と国土地理院の職員も参加しており、検討課題の中には上記した地理総合の実施を踏まえた地学・地理教育の活性化も含まれている。このような活動を日本地球惑星科学連合の場でも行いつつ、地理学と地学の関係者が連携して将来の両学問を支える人材の育成に取り組むことが重要である。