- 著者
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中村 千怜
辻 智大
四国西予ジオパーク推進協議会
- 雑誌
- 日本地球惑星科学連合2019年大会
- 巻号頁・発行日
- 2019-03-14
黒瀬川構造帯は主に大陸地殻を構成する岩石(花崗岩・変成岩)や大陸周辺の浅い海で堆積した地層(凝灰岩・石灰岩など)からなる.赤道近くにあった超大陸パンゲアが分裂した破片がプレートにのって大陸に衝突したものと考えられている.愛媛県の南西,西予市三瓶町にある須崎海岸は四国西予ジオパークのジオサイトである.ここでは,黒瀬川構造帯に属する4億年前の酸性凝灰岩の地層を,国内で唯一,遊歩道沿いに300mにも渡って観察でき,縦じまの地層によるダイナミックな景観を体感することができる.加えて,凝灰角礫岩や貫入岩が凝灰岩中に見られ,様々なイベントがあったことを示唆する.本発表では,これらの地層の見どころを紹介し,どのように地層が形成されたかを解説する.【酸性凝灰岩】凝灰岩層は火山灰が固まってできた岩石であり,泥質部と砂質部の互層をなしている.級化や荷重痕といった混濁流堆積物(タービダイト)に見られる構造が見られる.槙坂・加藤(1983)で凝灰岩は北東側ほど上位層であると推定され、今回薄片においても級下を確認し,追認することができた.細粒な凝灰岩中に粗粒な火山灰由来の長石などの粒子が観察された.これらのことから,火山活動が活発な大陸もしくは成熟した島弧の近海で凝灰岩は形成されたと推定される.凝灰岩が300mも堆積したということは,長期にわたる火成活動が安定してあったことを意味する.また,保存状態の良い放散虫化石が認められる層準もあるため,放散虫化石の年代から火成活動の時期の特定が期待される.【凝灰角礫岩】浅海に生息するサンゴの化石を含む凝灰角礫岩が不整合で凝灰岩を覆う.凝灰角礫岩層は淘汰が悪く,塊状無層理で,基底部に上方粗粒化が見られる.このことから,凝灰角礫岩層は山体崩壊あるいは海底地すべりで形成された崩壊堆積物であり,それらがより深海底に流れ込んだものであると推定される.【貫入岩】遊歩道の西部にて,いくつかの貫入岩が見られた.貫入岩は凝灰岩層の層状構造を切り,塊状で板状節理が発達している.また,細粒で均質な組織を示す.貫入岩の存在は,酸性凝灰岩堆積場において火成活動があったことを意味するため,今後の詳細な検討が望まれる.このように,須崎海岸では大陸ないし島弧周辺の海域で凝灰岩が堆積した様子を見ることができる大変珍しい場所である.須崎海岸は日本列島の生い立ちを解明するために学術的に重要な地質であるとともに,一般の方にも魅力を感じていただけるジオサイトでもある.発表では,その他にも須崎海岸で見られる様々な地球科学的な見どころを紹介する.【引用文献】槇坂・加藤(1983)愛媛県三瓶町より中期古生代サンゴ化石の発見.地質学雑誌,89,723-726.