- 著者
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大見 士朗
- 雑誌
- 日本地球惑星科学連合2019年大会
- 巻号頁・発行日
- 2019-03-14
1.地震活動の概要飛騨山脈南部の岐阜・長野県境に位置する焼岳火山の近傍において、2018年11月22日午前から同12月5日頃にかけて群発地震活動が発生した。一連の地震活動は11月22日午前から始まり、翌日11月23日から活発化した後に約10日間にわたり継続し、12月2日頃までにはほぼ終息した(以下、シリーズAとよぶ)。その後12月4日夕方から一時的に焼岳の東側にあたる上高地側で小規模な地震活動がみられた(同、シリーズB)。シリーズAの群発地震活動の震央は焼岳山頂の西約1.5kmから2kmの、深さ(海抜下)3kmから4kmに分布している。これは、2011年3月から4月に発生した群発地震の震源域の南西延長にあたる場所である。12月4日以降に上高地側で発生したシリーズBの地震は焼岳西側のそれに比べて若干震源が深い。その後、2019年1月末に、当初の焼岳西麓よりもさらに西側(同、シリーズC)で、また、2019年2月上旬には焼岳南部の飛騨山脈の稜線下(同、シリーズD)でそれぞれ小規模な地震活動がみられている。 飛騨山脈南部の群発地震活動は、同地域で京都大学が地震観測を開始した1970年代後半以降は、主な群発地震の震源域は互いに重ならず、いわば「棲み分け」をしている傾向が認められ、2018年11月末の焼岳西麓に集中するシリーズAの地震活動もその例外ではない。 また、シリーズAには明瞭な震源移動は認められなかったが、上述のように、シリーズB、C、Dのようにそれぞれ異なる領域で小規模な活動がみられるなど、焼岳の周辺域で地震活動の活発化が認められる。2.発震機構についてシリーズAの主たる地震の発震機構は、北西-南東圧縮の応力場を示す逆断層タイプのものが多い印象があるが、シリーズBの上高地側での地震にはこの地域では珍しい正断層型の地震が含まれる。また、シリーズCの地震は、観測点分布のためか、発震機構の決定が困難なイベントが散見され、精査が必要である。また、シリーズDのイベントは北西-南東の圧縮場を示すものが支配的にみえる。2.現地有感地震について同地域では、気象庁により奥飛騨温泉郷栃尾における震度情報が発表されるが、防災研究所附属地震予知研究センター上宝観測所では、さらに飛騨山脈の脊梁部に近い地域での揺れの状況を把握するために2011年秋から奥飛騨温泉郷中尾地区のDP.YAKE観測点にも強震計を設置して有感地震の観測を継続している。今回の地震活動における、DP.YAKEにおいて現地有感と考えられる地震は11月23日18時から12月16日0時までの期間に合計約340回を数えた。また、11月25日にはDP.YAKEにおいて震度4相当のゆれを観測した地震が3回発生した。なお、12月4日夕方からの上高地側での地震活動の際には15個程度の現地有感地震が観測され、そのうち12月4日22時50分の地震では震度4相当のゆれを観測した。 飛騨山脈南部の脊梁部付近で発生する地震が奥飛騨温泉郷中尾において現地有感になる例は、これまでも2011年3月や2014年5月の群発地震の際にも認められており、今回も同様の現象が観測されていると考えられる。中尾地区では気象庁の公式発表震度よりも有意に大きな揺れが観測されていることがあるので注意が必要である。3.焼岳の火山活動との関連焼岳山頂、焼岳中尾峠などに設置してある、温度計、地殻変動、地磁気等の観測データには季節変動以上の異常値は見られず、たとえ変動があったとしても検出限界以下であった。