- 著者
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[紫式部] [著]
- 巻号頁・発行日
- 1600
「伝嵯峨本」(あるいは「角倉本」)の名で知られる、慶長中期(1600頃)刊の古活字版の一本。その名称は角倉素庵が本阿弥光悦の協力を得て手がけた嵯峨本『伊勢物語』に倣ったもので、『源氏物語』の場合は本文・形態の類似を除いて客観的証拠を欠くゆえ、嵯峨本を模したとするのが通説。当該本は各冊巻頭に捺された「洒汀」印(近代期の俳人、秋本洒汀(1869-1945)の印か)によって、川瀬一馬『嵯峨本図考』(一誠堂書店、1932)112頁に紹介された安田文庫旧蔵本と特定でき、その装訂は現存する伝嵯峨本の中でも最も良く原装を伝えるものとされる。(岡田貴憲)(2020.10)