著者
■田 幸子
出版者
佛教大学
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.57-71, 2010-03-01

16世紀後半、キリスト教布教・伝道を目的に来日した宣教師によって伝えられ、日本語に翻訳された『イソップ寓話集』は、ローマ字口語体で書かれた『イソポのハブラス』と国字文語体で書かれた『伊曾保物語』の二種である。『イソポのハブラス』は、文禄2(1593)年天草学林で出版されたが、鎖国時代の発禁措置もあり、一般には流布せず、現在世界中に唯一冊、大英博物館の所蔵本があるのみである。一方『伊曾保物語』は、一般に広く普及し、芸の道の教えや子弟の教育のための教訓書として受容された。キリスト教の宣教師によって伝えられた書物であるにもかかわらず、鎖国後も『伊曾保物語』が出版され読み続けられたのは、物語の寓意が、その時代にふさわしい教訓として受け入れられたからであろう。『伊曾保物語』の本文と書物に引用された本文及び寓意に着目することで、日本の近世における『伊曾保物語』の受容のあり方を考察した。