著者
アレックス・ グラスハウザー
雑誌
比較法雑誌 (ISSN:00104116)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.1-14, 2014-09-30

1789年の外国人不法行為法は, 国際法に違反してなされた不法行為について連邦地方裁判所が第 1 審管轄権を有すると規定している。 この法律は200年近く適用されてこなかったが, 1980年にパラグアイで行われたパラグアイ政府職員による不法行為に対し, アメリカ合衆国の連邦裁判所が管轄権を行使して以来, 国際的な不法行為に対する有効な手だてとして, 注目を集めることとなった。 もっとも, 外国で行われた事件に国内法である外国人不法行為法を適用することは主権侵害のおそれがあるとして, 裁判所は原則として「域外適用禁止推定」がはたらくとしてきた。しかしながら, 外国人不法行為法は管轄に関する法にすぎず, また, 外国人不法行為法によって連邦裁判所が当該事件に適用する実体法は合衆国法ではなく国際法なのである。 その限りで, ナイジェリアにおけるナイジェリア軍の国際法違反に対して, 連邦裁判所の管轄権を否定した2014年のキオベル事件最高裁判決は, 域外適用の法を歪めたものといえるのであって, 今後再考されるべきである。