著者
アンドウ シャーリー 宮川 真子
出版者
大手前大学・大手前短期大学
雑誌
大手前大学論集 (ISSN:1882644X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.A1-A7, 2007

明治維新ならびに、第二次世界大戦敗北が主な引き金となって、日本は欧米の文明に習った近代化を急速に推し進めた。その結果、民主的政治形態が確立し、科学技術や産業もめざましい発展を遂げた。経済も急速に発展し、多くの国民が物質的な豊かさを享受できるようになった。反面、「欧米に追いつき追い越せ」のスローガンの下に始まった近代化の思想が、日本より欧米の方が優れていると考える傾向を生み、日本が自信と誇りを失ってしまったようだ。「校内暴力」、「いじめ」、「引きこもり」、「学級崩壊」、「モンスターペアレント」などの社会問題は日本でも深刻の度を増しているが、アメリカではすでに半世紀前から問題となっていた。さらに現在急速な経済発展を遂げている国々でも同様の問題が起き始めている。著者らはこの点に着眼し、上の社会問題と日本が大きな影響を受けたと考えられる西洋文明の物質的側面との関連を検証し、それぞれの異なった観点や分析を開示し、その解決法を模索した結果がこの論文である。今回は、アンドウが論点を解説し、宮川がその論を展開した前半部分を提示している。宮川は日本の社会問題の解決を、欧米に見習うだけでなく、日本古来の精神文化の再評価を通して日本人であることに自信と誇りを取り戻し、現代社会に役立てる知恵を自らの文化の中に見出すことによって独自の問題解決を試みることを提案する。これに対してアンドウは、上の現象は近代化の過程でどうしても避けられないもので、日本固有のものとは捉えがたいという観点から、次回の論集においてその論を展開する。