著者
オルドリッジ エディス
出版者
国立国語研究所
雑誌
国語研プロジェクトレビュー = NINJAL project review (ISSN:21850100)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.122-134, 2015-06

ワシントン大学シアトル本校言語学科現代日本語と違って,上代日本語の疑問詞は,一定の条件下において主語に先行することを義務付けられていた。本論は,従来の研究と同様に,この語順をWH移動の結果として捉える。ただし,移動先の着地点に関しては,英語の場合と同じCP指定部ではなく,文中(TP内部)にある焦点位置であると提案する。その根拠の1つとしては,疑問詞が先行する主語は,TP指定部にある主格主語ではなく,vP指定部にある属格主語のみであることを指摘する。TP内の焦点位置を裏付けるもう1つの根拠としては,項と付加詞との相対的位置を挙げる。vP内部に結合される項は移動するのに対し,vPの外側に結合される付加詞は,移動の対象にならず,元の位置に現れる。